日本キリスト教協議会(NCC)は13日、11日に成立した改正国民投票法に抗議し、現在参議院で審議中の重要土地規制法案に反対する声明を発表した。
改正国民投票法は、憲法改正のための国民投票の利便性向上を目的に、駅や商業施設への投票所設置など、2016年に改正された公職選挙法の内容を反映させたもの。立憲民主党の提案に基づき、広告規制などについて「施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」と付則に盛り込んだことで、自民、公明の与党のほか、立憲民主党などの一部の野党も賛成し、提出から約3年を経て可決・成立した。
しかし、NCCは「広告規制や、全国民の意思の十分な反映と評価できる最低投票率の規定について最後まで熟議に至らず、公平性と正当性に重大な疑義を残したまま成立してしまった」とし、強く抗議するとした。また、同法案の審議が行われた衆参両院の憲法審査会は、「国会をはじめ、政治が憲法に従って公正に行われているかを審査するためのもの」と指摘。同法案の審議は「本来の主旨を逸脱」するものだとし、「誠に遺憾」と表明した。
重要土地規制法案は、自衛隊や米軍の基地、原発など、政府が安全保障上重要だと判断した施設の周囲1キロや国境近くの離島を対象に、土地や建物の持ち主、利用実態などを調査・規制するもの。1日に衆議院で可決され、現在参議院で審議が行われている。
NCCは同法案について、軍事施設周辺で写真撮影やスケッチをしただけで特高警察に連行され取り調べを受ける根拠となった戦前の要塞地帯法を彷彿(ほうふつ)とさせると指摘。具体的に下記の4点を問題点として挙げた。
- 何が調査対象となる「重要施設」の「機能を阻害する行為」なのか、「生活関連施設」とはどこまでを含めるのか、また重要施設の「基盤としての機能」とは何を指すのか、そして何が「特定重要施設」として「特に重要」なのか、その定義は法案に明記されておらず、すべて判断は政府に委ねられて、応じなければ刑事罰が科される。
- 調査対象となる人物のどんな情報が調べられるのか、また「その他関係者」がどこまで広げられるかは、すべて内閣総理大臣に判断が委ねられていて、応じなければ刑事罰が科される。
- 「重要施設」周辺の土地/建物の所有者/利用者に、密告に相当する情報提供が義務付けられ、応じなければ刑事罰が科される。
- 政府の勧告や命令に従うことにより、その土地利用に著しい支障が生じる場合、総理大臣が事実上、「重要施設」周辺の土地を強制収用することができる。
その上で、こうした問題点を抱えたまま同法案が成立すれば、基地や原発などの周辺で市民が行う抗議活動さえも、国家権力により統制される危険性があると批判。これらの問題は、思想・良心の自由を保障する憲法19条などに抵触する可能性があるとし、同法案に対しては断固反対するとした。
声明は菅義偉首相に宛てたもので、総幹事の金性済(キム・ソンジェ)牧師(在日大韓基督教会)、東アジアの和解と平和委員会委員長の飯塚拓也牧師(日本基督教団)、平和・核問題委員会委員長の内藤新吾牧師(日本福音ルーテル教会)、都市農村宣教委員会委員長の原田光雄司祭(日本聖公会)の連名で出された。