ローマに本部を置くカトリック団体「聖エジディオ共同体」は1日、日本の在家仏教教団である立正佼成会と「アフリカのための共同アピール」を発表した。新型コロナウイルスが世界的規模で流行する中、多くの人が貧困に苦しむアフリカは特に困難な状況にあると指摘。ワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」への資金提供や、特許規則を超えたワクチンの製造認可などを求めている。
アピール文は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、「あらゆる場所で苦しみと困難が生じましたが、最も苦しみを抱えているのがアフリカ大陸であることに変わりはありません」と強調。「豊かな国の人々が皆、ワクチン(接種)に急いで向かう一方、アフリカでは多くの場合、ワクチンそのものが手に入りません」と訴えている。
また、こうした状況の中、世界では個人主義がさまざまなレベルで強まっていると指摘。「このような困難な時代だからこそ、私たちは、他者のことを考え、他者のために行動することが一層重要であると確信しています」と述べている。その上で、ワクチン接種においても、すべての人が接種しなければ再び新しいパンデミックが起こる危険性が高いことを挙げ、「他者への思いやりは各人にとって不可欠なもの」と訴えている。
具体的には、先進国に対しては、コバックスへの資金提供と自国に備蓄しているワクチンの一部譲渡を要望。製薬会社に対しては、一時的であっても、特許規則を超えてアフリカ向けワクチンの製造を認可するよう求めた。
今回、2016年に締結した合意書を更新するという両団体は、合意書で触れたローマ教皇フランシスコの言葉「『戦争のかけら』に満ちているこの星を、『平和のかけら』で満たすことができると信じています」を、アピール文でも言及。「これほど多くの苦しみにさいなまれた世界を癒やすには、恐れと個人主義の文化を克服し、『他者の文化』と『連帯の文化』を醸成していかなければなりません」とし、特に困難にあるアフリカを忘れてはならないと、世界のあらゆる宗教と国に強く訴えるとしている。
世界70カ国以上で活動している聖エジディオ共同体は16年、立正佼成会とアフリカ支援を目的とした合意書を締結。現在、アフリカ南東部のマラウイでHIV・エイズ治療と出生登録の推進のために協力して取り組んでいる。また18年と19年には、東京で「アフリカの新たなビジョン」国際会議を、会場となった上智大学を含め3団体で共催している。