聖書をどのように生きるか。私たちにとって、生きるということは一つの大きな事業です。この大事業をどのように管理していくか。たとえビジネスをしていないあなたも、例外なく「自分の人生」の経営者といえるのです。ですから「ビジネスと聖書」を共に考え、実行し、バランスの取れた幸せを手に入れてまいりましょう。
本日の結論:人のために祈ると脳内ホルモンのオキシトシンが分泌し病気を治し、幸せを呼ぶ。
宗教の謎を医学が解明 米医科大教授の革命的理論
米ウィスコンシン医科大学教授で総合医療「クリニック徳」の院長を務める高橋徳氏の著書との出会いがありました。医師の視点から、祈りに関する興味的な研究報告が記されています。私は約20年前、37歳の時にハワイで当時放映されていたライフ・ラインというテレビ番組を見て教会に導かれました。クリスチャンなりたての私は、人並みに問題を抱え、答えを求めていました。教会での祈り会に出席するたびに、他の方々の祈りのリクエストを聞いて祈るうちに、自分の問題があまりにも小さな問題に見えてきて恥ずかしくなったと同時に、癒やされていく自分がいることに気付かされました。この本を読んでいて、なるほどと、また違った角度で祈りについて理解できるようになりました。この本の中から幾つかのポイントを紹介させていただきます。皆様のお役に立てれば幸いです。
「利他の精神」が効く
人から優しくされたり、愛されたりするとオキシトシンが産生されます。一方、人を愛したり、人に優しくしたりすることでもオキシトシンがたくさん出ます。他者のための行動、すなわち「利他の行動」は、オキシトシンを大きく増やすのです。
オキシトシンは、女性の出産に関係するホルモンとして知られてきました。オキシトシンが発見されたのは1906年のこと。英国のヘンリー・デールという研究者が、脳の下垂体(ホルモンの働きを調整する部位)から出産を促す物質を発見しました。デールは、oxy(速い)+tocin(出産)という意味のギリシャ語にちなんで、この物質を「オキシトシン(oxytocin)」と名付けました。この発見によって、デールはノーベル医学・生理学賞を受けています。
2005年にある学会で「オキシトシンにストレスを抑える作用がある」との報告があり、米国に戻った著者は、ストレス研究で培ってきた経験を生かして早速実験を行ってみたそうです。ラット(実験用大型ネズミ)にストレスをかけると、そのストレスのせいで胃が動かなくなりますが、その際にオキシトシンをラットの頭に注射しますと、胃が通常通り動きだすことが確認されたそうです。
「愛のホルモン」と呼ばれるオキシトシン
世界的な科学雑誌「ネイチャー」にオキシトシンの論文が掲載されました。そこでは、オキシトシンが「愛のホルモン」と呼ばれ、愛情を育てたり、信頼関係を築いたりするのに役立つと報告されていました。確かに調べると、人から愛されたり、優しくされたり、マッサージを受けるなどでいい気持ちになったときに、オキシトシンが分泌されると分かってきました。そこで、著者は次のような実験を行いました。
オスのラットを2匹ずつ、1つの巣箱で飼います。対照群も同じように2匹で飼います。一方の巣箱ではパートナーの1匹が巣箱から連れ出されて、ストレスをかけられ、元に戻されます。もう一方の巣箱では、パートナーの1匹が外に連れ出されますが、ストレスをかけられずに、また元の巣箱に戻されます。すると興味深いことに、ストレスをかけられたラットが元に戻されると、巣箱で待っていたラットが、ストレスをかけられたラットの世話をかいがいしくすることが分かりました。一方、ストレスをかけられていないラットが元に戻されても、巣箱で待っていたラットはほとんど興味を示しません。
これらのラットを解剖し、脳の状態を確認したところ、ストレスをかけられた後、巣箱で待っていた相棒によく世話をされた(愛された)ラットの脳ではオキシトシンが多めに産生されていました。これは予想通りでした。しかし特筆すべきは、よく世話をされたラットと同じように、世話をしたラットの脳でもオキシトシンが多く産生されていたことです。
2011年の東日本大震災が起こったとき、著者は米国のウィスコンシン医科大学に勤めておられました。報を受け、直ちに帰国、被災地の岩手県大槌町に入られ、被災した患者さんの医療支援活動をされました。今も印象深く思い出されるのは、被災地で出会ったボランティアの方たちの働きぶりであるといいます。多くのボランティアが朝早くから夜遅くまでフルに活動していました。
支援制度もまだまだ整わず、物資も不足しており、ボランティア活動自体、かなりハードだったはずです。しかし、皆さんがほとんど体調を崩すこともなく元気に活動していました。「普段の仕事をしているときに比べると、なんだかとても元気で若返った気分がする」。そんな話を異口同音に多くのボランティアの方々から聞いたといいます。
なぜ、ボランティア活動に従事している方たちの多くが心身共に元気だったのでしょうか? ここに、オキシトシンが関与していることは間違いありません。ストレスをかけられたラットの世話をかいがいしくしたラットにオキシトシンが多く産生されていたように、利他の行動、人のために働くことが、ボランティアたちを元気づけていたのです。
本日の結論:人のために祈ると脳内ホルモンのオキシトシンが分泌し病気を治し、幸せを呼ぶ。
■ 高橋徳著『人のために祈ると超健康になる!』(マキノ出版、2018年)
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