欧米に比べ高額とされる日本の葬儀費用は、1件当たり平均200万円を超えるレベルから、葬儀規模の縮小により、100万円程度にまで低下してきましたが、いまだ適正な価格には至っていません。
また、宗教別に見ると、仏教葬儀の比率は相変わらず高く、70パーセント以上を占め、2パーセント程度のキリスト教葬儀は増加傾向にあるものの、日本文化に影響を与えるほどではありません。
今後、日本宣教の拡大を目的に、品質の高いキリスト教葬儀を全国に普及させ(目標50パーセント)、葬儀費用を欧米並みの50万円以下に低減させることを目標に、現状を分析し、今後の展開を探ってみました。
どの葬儀社も市場全体を牽引する力がない
全国には、約6千社もの葬儀社が存在するといわれています。葬儀事業は、2兆円程度の市場ですから1事業者当たりの売上高は3億3千万円ほどになります。市場占有率は最大でも4パーセント程度しかなく、どの事業者も市場全体を牽引する力があるとは言えません。
葬儀会場を多く持つ葬儀社の売り上げが多くなる傾向ですが、葬儀会場の稼働率が30パーセント程度と低いため、人材を雇用し続けるのが難しく、多くの場合、人材派遣業者に頼っているのが実情です。当然、葬儀の品質向上やコスト低減は難しくなります。また、葬儀会場を持たない葬儀社は、必要な人材を雇用することに特化できる利点がありますが、そもそも会場がないため、1件当たりの売り上げが低い上に、依頼件数の確保が難しくなります。
牧師や教会が葬儀を担う仕組みが変化を生む
葬儀業界がこのような閉塞状態にある中、牧師や教会が主導するキリスト教葬儀が普及すれば、葬儀の品質向上と価格適正化に貢献するだけでなく、日本宣教の拡大が大いに見込まれることになります。
人が召された際、葬儀社は、遺体の処置、搬送、安置、役所への届け出、火葬場手配、葬儀手配、参列者への返礼品、食事、移動手段などさまざまな必要を一手に引き受けてくれます。大変ありがたいことですが、すべてを葬儀社に任せるのではなく、ある程度の対応を教会が担うことで状況が変わります。特に、遺体安置場と葬儀会場として教会堂を提供できれば、遺族に寄り添う機会が増え、教会の地域社会への貢献度が増していきます。
牧師は、未信者家族への葬儀司式の提供を含め、幅広い対応への備えが必要とされます。また、教会員の中にも、牧師をサポートし、地域の葬儀事業者と連携して葬儀全体をマネージできる人材が求められます。
伝統文化の中で生きる仏教葬儀は変われない
一般的に、仏教葬儀は葬儀社が主導し、僧侶は葬儀の中に登場し、伝統的な読経を唱える役を担います。一方、キリスト教葬儀は、司式牧師が遺族に寄り添って内容を決め、葬儀式全体を主導します。伝統的な読経を唱えることから変われない仏教葬儀に比べ、キリスト教葬儀は遺族の想いをくむ品質の高い内容になる可能性があります。教会として、葬儀の品質向上に取り組むなら、さまざまな展開が生まれるでしょう。
また、仏教の僧侶は葬儀文化の中で生きていますので、葬儀に関わることから得られる報酬(お布施)が減るのは死活問題です。一方、牧師は収入が多いわけではありませんが、毎月の収入が保証されていますので、僧侶に対するような過度な謝礼は不要です。
キリスト教葬儀が日本の葬儀事業全体を牽引する
葬儀社が独自に準備する葬儀会館や生花壇、さらに無宗教葬儀のプログラムやBGMなどの多くは、現代社会のニーズに沿って変化し、仏教葬儀の伝統的なスタイルに合わなくなってきています。それでも葬儀式の中心は、仏教葬儀の伝統に縛られることが求められ、葬儀事業全体の閉塞感につながっています。
そもそも日本人は、既に欧米のキリスト教文化の影響をかなり受けていますので、牧師による司式以外は、一般の葬儀社の中に、既にキリスト教葬儀にふさわしいものが数多く備えられています。牧師や教会が地域の葬儀事業者を主導し、キリスト教葬儀を普及させるなら、キリスト教葬儀社だけでなく、一般の葬儀事業者も新たな展開を見いだし、日本の葬儀事業全体の活性化につながるでしょう。
教会間の敷居を取り外す働きの仕組み
このように大きな可能性を秘めたキリスト教葬儀ですが、日本の葬儀文化に影響を与えるためには、教会間の連携の悪さが大きな障害になります。おそらく既存の教会、教団や宣教団体、あるいはキリスト教葬儀社の働きの範疇(はんちゅう)では対応が難しく、新たな働きの仕組みが必要になると考えています。教会間の敷居をすべて取り除くことは不可能ですが、日本宣教の旗印のもと、連携できる働きを切り出し、現代社会の必要に応える働きの仕組みを展開したいと願っています。
ブレス・ユア・ホーム株式会社と一般社団法人善き隣人バンクは、このような分析と試行錯誤を重ねながら日本宣教の拡大を目指してきました。今後、コロナ禍の収束とともに、これらの働きのビジョンを多くの皆様と共有する機会が増えると期待しています。神様の御旨に従い、日本宣教拡大に貢献できる実のある働きを、共に展開したいと願っています。
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