東京電力福島第1原発の敷地内にたまる処理済み汚染水の処分について、日本カトリック正義と平和協議会(正平協)、同平和のための脱核部会、韓国カトリック司教協議会正義平和委員会、同生態環境委員会は9日、政府が検討中の海洋放出に反対する日韓共同声明を発表した。
声明は海洋放出について、福島県内外の自治体議会をはじめ、福島、宮城、茨城各県の漁業協同組合、全国漁業協同組合連合会が反対の立場を表明し、さらには韓国南部の済州島を行政区域に持つ済州特別自治道(道は都道府県に相当)の知事も海洋放出の準備を直ちに中止するよう求めていると指摘。処理水を海に放出すれば、「住民、国民、海でつながる世界の人々に不安と実害を強いることになる」とした。
経済産業省資源エネルギー庁「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の報告書(昨年2月10日付)は、現在タンクに貯蔵されている処理水の約7割に、環境中へ放出する際の基準を超えてトリチウム以外の放射性物質が含まれている問題について、2次処理をすることで規定値以下に軽減が可能としている。
しかし声明は、放射性物質の2次処理はいまだ試験段階にあり、確実な結果を得られていないと指摘。トリチウムの健康被害についても専門家で意見が分かれており、死産、ダウン症の発生、小児白血病などによる幼児期の死亡などとの関係が指摘されているとした。また、処理水は大型タンク貯留、モルタル固化処分などの方法も考えられ、タンク増設の要地確保には検討の余地があるため、海洋放出を唯一の方法とすべきではないとした。
さらに、政府報告書が人体以外の海洋生物、海洋の環境に対する処理水の影響について一切触れていないことが「いっそう気がかり」と指摘。「むしろ確実にいえることは、ひとたび海に放出された放射性物質は、もとに戻すことはできない、ということ」だと強い懸念を示した。
「この世界は与えられたものであるゆえに、効率性と生産性をただただ個人の利益のために調整する単なる功利的視点で現実を眺めることは、もはや私たちにはできません」とするローマ教皇フランシスコの言葉を引用。「身体や環境への被害は、起きた時ではすでに遅く、そして私たちには、未来世代に、本当の意味で安全で安心して生きることのできる地球環境を受け渡す責任がある」と強調した。