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“難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん

2020年10月12日16時56分
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“難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん
25歳ごろ、電動車椅子に乗って教会で証しを語る保田広輝さん

遺伝子の異変により、全身の筋肉が衰えていく難病「筋ジストロフィー」。筋力の低下は、呼吸や血液循環など生命維持に関わる器官にも影響するため、患者をやがて死に至らしめる。日本には推計で約2万5千人の患者がいるとされているが、いまだに根本的な治療法は確立されていない。

24時間人工呼吸器を付けて生活し、自身で動かせるのは手の親指だけという保田広輝さん(29)もその一人。4歳の時、最も発症頻度が高く、足から筋力が低下していく「デュシェンヌ型」の筋ジストロフィーと診断された。クリスチャンであった両親は、生まれたときから上の兄2人とは違う天使のような仕草をする保田さんを見て、「神様からのプレゼントに違いない。この子を神様に仕える者として育てたい」と思っていたという。しかし医師が両親に告げたのは、当時は生きても20歳までという難病の重い現実だった。神に対する怒りさえも湧いてきたという両親は、幼い保田さんには病気のことを詳しく告げられず、長い間苦しんだ。

難病であることを知らずに育った保田さんは、走ることも、階段を上ることもできなかったが、「自分はただ運動神経がないんだ」と思っていた。その思いは、9歳で車椅子生活になっても変わらなかった。生まれたときから家族と共に教会に通い、生後2カ月で幼児洗礼を受けていたが、13歳で自ら神を信じることを決心し、信仰告白をする。「母は私が小さい頃、『親と子の聖書』という子ども向けの聖書をいつも読み聞かせてくれました。それが信仰の土台になったと思います」

“難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん
2歳ごろ

中学3年生になってからは、「病気のことだけでなく、心の思いや悩みをありのままに伝えたら、みんなの役に立つのでは?」 と思いブログを始めた。やがて共感の輪が広がり、保田さんの元を訪ねてくる人も増え、信仰の証しの場が与えられていった。

しかし、大学受験に精を出していた18歳の春ごろから、病気が急に悪化し始めた。一日中、内臓の痛みと吐き気が止まらず、ひどい息苦しさと激しい頭痛のせいで、ほとんど眠れない日が続いた。「毎日、意識がボーとなり、本当に死ぬかと思う日々でした」。そんな状態でも受験勉強は続けたが、試験の点数は下がる一方。「努力が無駄になるのはつらかったです。苦しみながら『神様、助けてください』と祈り続けました」

当時の担当医は、病気の悪化に気が付かず、保田さんは1年に5回も入退院を繰り返した。そうした中、母親の懸命の努力で、日本でも有数の筋ジストロフィーの専門医との出会いが与えられる。かなり危険な状況だったが、人工呼吸器を導入することで命を取りとめた。「今、振り返ると、本当にギリギリのところでした。神様が救ってくださったと思います」

だが、人工呼吸器を付けて生活するには、毎月医師に診断してもらう必要がある。そのため地元の専門病院で検査入院したが、そこで「35歳までの命」と余命宣告を受けた。「心が引き裂かれる宣告でした。難病の現実を痛感しました」。その後、地元の大学には合格するが、体調不良により半年で中退を余儀なくされた。

それからは、自分自身を見つめ直す日々が続いた。余命宣告を受け、人工呼吸器を付けながら、体の痛みのために1日の大半をベッドで過ごす生活は、大きなストレスとなり、心は暗くなるばかりだった。

「神様、なぜ35歳で死ぬ難病を与えたのですか。若くして死にたくないです。お願いですから、この病気を治してください」。祈りの中で本音をぶつけるしかなかった。「こんな難病では仕事も結婚もできない」と人生に絶望した。毎週日曜日には礼拝に行き、聖書を読んだり祈ったりすることは毎日欠かさなかったが、「祈り続けても、生きる意味が分からなかったので苦しかったです。神様の沈黙を感じる日々でした」と言う。

そうした中で出会ったのが、オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』だった。フランクルがナチスの強制収容所時代の経験を基に書いた本は、「苦しみに意味を見つけられなければ絶望となる。しかし、苦しみに意味を見つけられれば希望となる」ことを教えてくれた。「それからは、難病でも神様が生きる意味を与えてくださると確信して、神様の語り掛けを待ち続けました」

余命宣告を受けてから10カ月。保田さんの心に深く語り掛けたのが、「人の子よ、わたしがあなたに語ることを聞きなさい」と書かれたエゼキエル書2章8節だった。「この言葉を通して、神様が『私の言葉である聖書を読み続けなさい。あなたは私の言葉で生き返る』と語られているように感じました」

“難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん
7歳ごろ

さらに余命宣告から2年後、ヨハネによる福音書に書かれたイエス・キリストの言葉によって保田さんの心は大きく変えられた。

わたしはあなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことをすべてあなたがたに知らせたからである。あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。(ヨハネ15:15~16)

「私は好きで難病に生まれたわけではないです。しかし、神様から任命を受けて、選ばれて難病に生まれたのだと、この言葉を通して何度も感じました」。難病も「神様から与えられた良いもの」とさえ感じるようになった保田さん。自身の命までも犠牲にし、罪人の私たちを救ってくれたイエス・キリストの愛に応答し、「難病の私が神様におささげできるのは、この命しかありません。私の人生を神様におささげします」と心からの祈りをささげた。

「難病の人生を通して神様を伝える」。そう自身の使命を強く感じるようになった保田さんの人生は、その後少しずつ変えられていく。筋ジストロフィーの治療では世界トップレベルとされる北海道の八雲病院(現・北海道医療センター筋ジストロフィー病棟)での治療が可能となり、世界最先端の技術を使って作られた電動車椅子も与えられ、寝たきりの生活から解放された。さらに、より深い聖書の学びを望んでいた保田さんの気持ちをくみ取ってくれた両親が、仕事を辞め自宅を売却。保田さんが神戸改革派神学校で学べるよう、家族で福岡から神戸に引っ越してくれた。雑誌で取り上げられたり、牧師やSNSの友人が紹介してくれたりしたことで、在学中から証しの依頼が教派を超えて来るようになり、これまでに北海道から九州までの37の教会で証しを語ってきた。

神戸改革派神学校では一部分の学びしかできなかったが、吉田隆校長は送別会で「正規に卒業できたわけではありませんが、あなたは、すでに立派な伝道者です」と励ましの言葉を語ってくれたという。保田さんは次のように言う。

「人間が生きる意味は、自分や他人が決めるのではなく、自分を生かしておられる神様が決めてくださると思います。難病の私であっても、神様から難病クリスチャンとして使命を与えられているからこそ、生きる意味、生きる喜びがあるのです。難病は苦しみの一つですが、苦しみとは、神様に委ねるための『痛み』です。人の心は神様に委ねるまでは安らぐことはないのです」

「神様の御心ならば、この難病も治ると信じています。しかし、たとえ若くして死んだとしても、イエス様を信じる人は、その栄光の体と同じ姿に復活して、天国で神様と共に永遠に生きることができるのですから、それも良いのです。神様との永遠の交わりが、人間にとって最高の幸せなのですから。だから、35歳で死ぬ人生でも私は絶望しません」

保田さんは今年に入ってから、呼吸がうまくできなく1日3時間程度しか眠れない日々が続いている。そのため、1日の半分は音楽や聖書朗読CDを聞きながら横になり、別の時間にはパソコンでSNSの発信や読書をしながら過ごしているという。

“難病だからこそ生きる意味がある“ 「35歳までの命」余命宣告受けた筋ジストロフィー患者の保田広輝さん
保田さんが自身で動かせるのは手の親指のみだが、特別な機械を使って一人でパソコンを操作している。

パソコンは、すべての操作を1つのスイッチで行える「ワンキーマウス」と、頬や手などの弱い力でスイッチ操作ができる「ホッペタッチスイッチT」を使い、唯一動かせる手の親指のみで操作している。SNSは現在、ツイッターと note、またユーチューブ(「保田広輝」で検索)で発信しており、文字はこれらの機械とパソコンの画面に表示されるスクリーンキーボードを使って、一文字一文字打っている。

「私は、難病クリスチャンとして神様から与えられた使命があるので、これからも神様を信じる素晴らしさを伝えていきます。今のところ、残り6年余りの短い人生でどれだけのことができるか分かりませんが、悔いのないよう神様にお仕えして、天に召される日まで、神様のために生きていきたいと祈っています」

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