「灰の水曜日」を26日に迎え、2020年の「レント」が始まった。今年の「イースター」(復活祭)は4月12日で、それまでの約40日間がレントとなる。教派によって異なるが、灰の水曜日にはミサや礼拝が行われ、礼拝者の額に灰で十字の印を付ける「灰の式」などが行われる。聖書には灰をかぶって罪を嘆く描写が多くあり、灰は悔い改めを象徴する。教会暦を重んじる教会では、イエス・キリストの復活を祝うイースターまでのこのレントを、キリストの受難を思い、悔い改める期間として過ごす。
日本語では、「四旬節」(カトリック)、「大斎節」(聖公会)、「受難節」(プロテスタントの一部)と、呼び方はさまざま。期間は「四旬節」と言うように、40日間とされるが、正確には日曜日以外の40日と、日数に含めない6回の日曜日を合わせた46日間。「40」という数字は、キリストが公生涯に入る前に荒れ野で40日間断食し悪魔の誘惑を受けたことや、エジプトを脱出したイスラエルの民が約束の地とされたカナンに入る前に過ごした荒れ野での40年間などを象徴している。
レントの期間、断食や食事その他の行為を節制するクリスチャンも多い。カトリック教会では、限定的な断食である大斎と小斎を定めている。カトリック中央協議会のホームページによると、一部の食事を制限する「大斎」は18歳以上60歳未満を対象に灰の水曜日と聖金曜日(復活祭直前の金曜日)に守る。また肉類を食べない「小斎」(各自の判断で他の償いの形式に変更可能)は14歳以上が対象で、祭日を除く毎金曜日に守るとしている。
米ライフウェイリサーチの2017年の調査(英語)によると、米国でレントを守る人は全人口の24パーセント。教派別では、カトリックが61パーセントと多く、プロテスタントは20パーセント。しかしプロテスタントの中でも、福音派は28パーセントと若干多い。
レントの色は紫で、教会暦に合わせた典礼色を用いる教会では、聖卓(祭壇)や説教壇のテーブルクロス、司祭や牧師の祭服、ストールなどが紫で統一される。
レント(Lent)という言葉は、アングロサクソン語で「春」を意味するレンクテン(Lencten)と、レントの期間の大部分が該当する「3月」を意味するレンクテンティッド(Lenctentid)から派生した。教会史に残るレントに関する最も早い言及は、325年のニカイア公会議においてだとされている。この公会議では有名な「ニカイア信条」に加え、20箇条のカノン(教会法)も制定されており、カノン第5条はレントについて述べている。
レントの最後の1週間は「聖週間」(受難週)。その始めであるイースター前の最後の日曜日は、キリストのエルサレム入城を群衆が棕櫚(しゅろ)の枝を手に歓迎したという聖書の記述から「パームサンデー」(棕櫚の日曜日、枝の主日)と呼ばれる。聖週間の最後は「過越(すぎこし)の聖なる3日間」として、キリストが弟子たちの足を洗ったことに因み、司祭や牧師が信徒の足を洗う聖木曜日(洗足木曜日)、キリストの十字架上の死を記念する聖金曜日(受難日)、聖土曜日が続く。そして日曜日に、キリストの復活を祝うイースターを迎える。
※ 各祭日や期間は、教派により記事中に記述した以外にもさまざまな呼称があります。