エジプトの軍事裁判所は11日、3つの教会と警察の検問所を自爆テロで攻撃し、80人余りを殺害したとして、過激派組織「イスラム国」(IS)の構成員ら17人に死刑を言い渡した。
エジプトでは昨年4月のパームサンデー(聖枝祭)に、北部の都市アレクサンドリアとタンタにある2つの教会を狙った自爆テロがあり、45人が死亡した。また2016年12月には、首都カイロにあるコプト正教会の総本山である聖マルコ大聖堂などに対して自爆テロがあり、28人が死亡するなどした。
今回の判決はこれらの事件に対するもので、死刑となった17人のほか、19人には終身刑が、10人には10〜15年の禁錮刑が言い渡された。ロイター通信(英語)によると、被告側は上訴するとみられている。
エジプトでは、キリスト教徒が繰り返しテロの標的にされている。今年初めには、カイロ北部のカリュービーヤ県で、教会に対する自爆テロ未遂事件があった。この事件では、治安部隊が教会に近づこうとする自爆テロ犯を阻み、テロ犯は教会から約250メートル離れた場所で、体に巻いていた爆弾を自ら爆破させ、死亡した。また昨年5月には、修道院へ向かう途中だったキリスト教徒30人余りが武装勢力に殺害される事件も起きている。
キリスト教徒に対する迫害のひどい上位50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)によると、エジプトは世界で17番目に迫害がひどい国だ。
同リストを作成しているキリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」によると、エジプトでは以前からキリスト教徒に対する迫害は存在していた。しかし、ムハンマド・モルシ元大統領が2013年に退陣して以降、キリスト教徒に対する過激派の暴力が一層激しくなり、同国における信教の自由やその他の基本的権利に対する評価がさらに悪化したという。
オープン・ドアーズは「イスラム教徒が人口の9割を占めるエジプトでは、同国一帯にイスラム教が出現して以来、キリスト教徒は2級市民として扱われている。イスラム教の過激派グループの台頭は、エジプト人キリスト教徒に対する迫害を悪化させるばかりで、村や近隣地域、職場などで影を落とし続けている」と指摘している。