海外ではクリスチャン、でも母国ではノンクリスチャン――。米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(英語)は最近、海外留学中に救われても、帰国すると信仰を失ってしまう中国人学生が非常に多いことを伝えた。
フォーリン・ポリシーによると、2010年代初頭から、海外留学する中国人学生の数が増え始め、その多くは米国、英国、カナダ、オーストラリアなど英語圏の国で教育を受けるという。そして、この間に多くの学生がクリスチャンとなり、毎年、何万もの学生たちが中国に帰国している。
しかし、米国で中国人留学生のために働いているボランティアや宣教団体スタッフらによると、多くの学生たちが帰国後に信仰を失ってしまい、その8割ほどが最終的に教会へ行くことをやめてしまうという。
中国では、公に他人を改宗させることは厳しく制限されており、教会間のネットワークも分断されている。フォーリン・ポリシーは、「中国人の改宗者たちが母国に戻ると、多くの人は自分に合った教会を選ぶことに難しさを見いだします」と伝えている。
中国の文化もまた、海外で救われたクリスチャンたちにとって障壁となっている。ニューヨークでの留学後、米国のコンサルタント会社の北京支社で働いているイフィエ・ニエさんは、「私たちが住む環境は、最近の文化であれ、伝統的な文化であれ、私たちのキリスト教信仰とは相いれないと感じます」と話す。
英ノッティンガム大学への留学経験があり、現在は南京にある大学で教師をしているジェイソン・フーさんはフォーリン・ポリシーに対し、仕事と信仰のバランスを取ることはひどく困難だと語った。「建前としては、私たちは他のあらゆることよりも神を優先すべきですが、現実の状況はしばしばそれを許さないのです」
中国は公式には無神論国家だが、8700万人の共産党員がいるとされる国内には、6700万人から1億人のクリスチャンがいると海外の学者らは見積もっている。
キリスト教迫害監視団体「チャイナエイド」(英語)によると、中国政府は昨年、全ての宗教が「中国共産党の権威と指導に降伏する」ように強制する方針に変わった。
中国当局は、政府非公認の家の教会(地下教会)に、政府公認の三自愛国教会に加盟するよう強要。チャイナエイドによると、宗教団体や政府が危険視した牧師たちは厳重に監視されており、中国のクリスチャンたちは部外者に対して用心深く、防衛的に接するようになってしまったという。
中国では昨年10月から「改正宗教事務規定」が発効し、宗教団体に対する引き締めが一層強まっている。同規定では、▽海外での宗教的訓練、会議、活動に参加するよう市民を組織すること、▽説教、▽宗教的活動を組織すること、▽宗教的施設の設立や学校内に宗教的な場所を設けること、▽インターネット上で宗教的なサービスを提供すること、▽不認可の宗教的場所で宗教活動を組織すること――などを禁じている。
チャイナエイドはこれらの規定について、「家の教会を消散させ、チベットと新疆(しんきょう)ウイグル自治区の分離主義者たちを黙らせ、中国のカトリック教会へのバチカンの影響力を弱めることによって、全ての政府非公認の宗教活動をさらに抑圧すること」を目的とするものだとしている。
キリスト教徒に対する迫害が激しい国をまとめた米国オープン・ドアーズの「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)では、中国は39番目にランキングされている。