9月は、大学などの研究機関の研究者が一同に集まる学術大会の季節だ。来週末の9日から11日にかけては早稲田大学で「日本宗教学会」、関西学院大学(西宮市)で「日本新約学会」、北星学園大学(札幌市)で「キリスト教史学会」がそれぞれ学術大会を開催する。また13、14日には広島女学院大学で「日本基督教学会」が学術大会を開催する。
これらの学会は、一般の来場者も千円程度の参加費を払うことで傍聴が可能だ。キリスト教や宗教が、現代の社会やグローバル化の中でどのように変容しつつあるのか、足を運んで聴くことで、知的刺激を受ける機会にされてはいかがだろうか?
日本宗教学会 第75回学術大会 (9月9~11日) 会場:早稲田大学戸山キャンパス
日本宗教学会は、2千人以上の研究者が所属して宗教に関わるあらゆるテーマを扱う、宗教に関しては日本最大の学会だ。キリスト教はもちろん、仏教、イスラム教、神道、新宗教、社会学、哲学、歴史学など幅広い。
初日の9日には、「宗教哲学の根本問題」というテーマで、上智大学名誉教授のクラウス・リーゼンフーバー氏が「意味への問い―宗教哲学の根拠付けのために」と題して講演する。
リーゼンフーバー氏は、ドイツ出身の哲学者でカトリックのイエズス会士。上智大学中世思想研究所の元所長として『中世思想原典集成』の編者として日本へのヨーロッパ中世思想の紹介に大きな貢献を果たしたことで知られる中世思想・哲学の泰斗だ。また上智大学では禅の指導をするなど、日本文化とキリスト教の融合についても研究を続けている。
このほか全13部会に別れて約250の個人発表と、18のパネル発表が行われる(詳細はこちら)。「人間を魂と受けとめる医療―医療者が信仰を持つ可能性」「宗教研究と地球環境問題―国際グローバル理解年のために―」「震災後の宗教とコミュニティ―関与型調査からの再考察―」「宗教的ケアとしての読経の効果とその応用」「国を越えた共通の宗教的信念はあるのか?」「唯一神教の世界宗教史再考」など、震災以降の宗教と社会の関わりや、グローバル化の中、国際的な枠組みの中での宗教の再検討などが目立つ。
日本基督教学会 第64回学術大会 (9月13、14日) 会場:広島女学院大学
日本基督教学会では毎年、プロテスタント、カトリックなど教派を問わず、キリスト教に関するさまざまな研究発表が行われる。13日には主題講演「キリスト教主義女子教育と平和」(湊晶子 広島女学院院長・大学学長)が行われる。また14日には、「被爆地ナガサキから」(小西哲郎 長崎外国語大学教授)、「被爆地ヒロシマから」(澤村雅史 広島女学院大学准教授)と題して講演が行われる。
このほか計4会場で計37の研究発表が行われる。「同姓婚合法化をめぐる神学的課題」「非欧米諸国におけるエコフェミニスト神学 ラテンアメリカの事例」「沖縄から広島へ―牧師・谷本清の軌跡―」「ホーリネス運動からペンテコステ運動へ―19世紀米国における『聖霊のバプテスマ』理解の文化的変遷―」「在日大韓基督教会の社会参与 1970年前後の『出入国管理法案』反対運動をめぐって―」「『犠牲』に対する神学的・倫理学的考察」など、現代的な問題意識からのユニークな研究が目立つ。
日本新約学会 第56回学術大会 (9月9、10日) 会場:関西学院大学(西宮市)
2日間にわたり7つの研究発表が行われる。
キリスト教史学会 第67回大会 (9月9、10日) 会場:北星学園大学(札幌市)
9日に「札幌とキリスト教―戦時下のキリスト教」と題したシンポジウムが行われる。10日は「北海道のキリスト教」と題した公開講演が行われる。そのほか計17の研究発表が行われる。
いずれも詳細については、各ホームページを参照のこと。