日本映画史上、初の快挙であるキリスト教映画3作品の連続公開。第1弾となる映画「復活(原題:Risen)」が28日、全国の劇場で上映が始まった。本作は3週間限定で上映され、次の映画「天国からの奇跡」にバトンをつなぐ。公開初日を迎えたヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)は満席御礼。駐日バチカン市国ローマ教皇庁のジョセフ・チェノットゥ大使の姿も見られた。
また、公開を記念して同劇場では、ミュージシャンの角松敏生さん、クリスチャンアーティストの国分友里恵さんを招いてのトークイベントが行われた。ゴスペルを通してキリスト教と関わりの深い角松さんは、キリスト教に関心のある、クリスチャンではない人の立場から、国分さんはクリスチャンの立場から、本作の見どころを語った。
司会を務めたのは、ゴスペルチャーチ東京の波多康牧師。松任谷由美のディナーショーで聖書のメッセージを語ったり、角松さんのゴスペル楽曲制作にもアドバイスを寄せるなど、ユニークな活動に数多く取り組んでいる。「会場の皆さんはまだ映画を見ていないので、ネタバレのない範囲で感想をお願いします」と波多牧師が投げ掛けると、2人は「それは難しい」と笑いつつ、声をそろえて「面白かった」と答えた。
特に、角松さんは本作を見終えた瞬間に、「面白い!」と思わずひざを叩きたくなったという。本作は、イエスの復活をミステリー仕立てで描いているが、角松さんは「信仰を外して見ても、ミステリー作品として非常に秀逸だった。極上のミステリーに仕上がっている」と絶賛。「荘厳なイメージを想像していたが、素直に楽しむことができた。クリスチャンでない人にとっても、エンターテイメント作品として面白い」と太鼓判を押した。
また、もう一つ面白いと感じたポイントに「歴史的事実のディテール」を挙げ、「聖書を知らない人でも、どういうことが聖書に描かれているのかすんなりと理解できる。架空の人物であるグラヴィアスを登場させることによって、クリスチャンでない人が、信仰を持つ人々の世界に触れて変わっていく様子が描かれ、誰にでも見やすい作品になっている。信仰に関係なく、歴史的事実としての出来事に自然と興味が湧いてくる」と話した。
さらに、映像作家でもある角松さんは、独自の視点から「最近の作品はCGが多く使われるが、本作はCGを使っている場面が少ないと好感を持てた」という。角松さんが映画全体の中で一番気になったのは、最後の場面に映る空の色だそうで、「CGじゃなかった。今どきの映画は、空をこんな色にしないよなと思えたのが良かった。ぜひ、注目してほしい」と興奮気味に話した。
国分さんは、「グラヴィアスが、弟子たちのきらきら輝く空気感に触れて、どうして良いか分からなくなり変えられていく様は見応えがある。非常に心がゆさぶられた」と感想を語った。「クリスチャンとして、朝から晩まで自分ばかりを見つめているのではなく、もっとひたむきにイエス様について行こう、という気持ちを新たに取り戻したいと感じた」と話し、「クリスチャンでない人にも見てほしいのはもちろんだが、クリスチャンには絶対に見てほしい」と語気を強めた。
2人は、「面白かった」「グラヴィアスを演じたジョセフ・ファインズの芝居が素晴らしい」「ハリー・ポッターのドラコ・マルフォイ役のトム・フェルトンが良い仕事をしている」と一致した意見で本作の見どころを語ったが、結末については全く真逆の見解を述べた。
角松さんは、グラヴィアスは「回心していない」と理解したそうで、確かに心境の変化はあったものの「人として悩んでいるな」というところで幕を閉じたと思っているといい、国分さんは、グラヴィアスは「回心した」と思っているという。「決して、結末をはぐらかしているわけではない。見る人によってさまざまな解釈ができるのは、エンターテイメントとして秀逸」と角松さんは話した。
波多牧師は、「本作は、聖書の世界を忠実に、ローマ帝国の時代を良い意味で手作り感満載に描いている。とても楽しめるエンターテイメント作品であると同時に、私たち見る人の想像力を膨らませてくれる作品」だとまとめ、最後に「キリスト教のいう復活とは、聖書が言っていることは何か、考えるきっかけにしてほしい。聖書の世界、ローマ帝国の時代にタイムスリップして楽しんでください」と呼び掛けた。
映画「復活」は、28日(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開されている。