キリスト教精神に基づく人格教育を理念とし、鎮西学院高等学校や長崎ウエスレヤン大学などを運営する学校法人鎮西学院(長崎県諫早市)は2日、政治学者で東京大学名誉教授の姜尚中(カン・サンジュン)氏が、4月1日付で同学院の教育顧問に就任すると発表した。就任に際し記者会見に臨んだ姜氏は、「地域に若い人材がとどまるように、大学や経済界などが協力していかないといけない」と、地方での教育にかける思いを語った。西日本新聞などが伝えた。
北米メソジスト教会から派遣されたC・S・ロング博士によって設立されてから、今年で135周年となる鎮西学院。この長い歴史の中で、原子爆弾による被爆を経験しながらも、幼稚園・高等学校・大学を持つ学園へと成長してきた。森泰一郎学院長は、「鎮西学院に課せられた世界的な役割は、長崎原爆の被爆校として、原爆の悲惨さと世界平和の重要性を世に発信することなのです。鎮西学院は、反戦と平和を戦後一貫して世に訴えてきました。この役割こそ鎮西学院の使命なのです」とのメッセージを、同学院のホームページ上で公開している。
一方姜氏は、国際基督教大学助教授・準教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授、聖学院大学学長などを経て、現在東京大学名誉教授。テレビ番組への出演や、ベストセラーになった『悩む力』や『在日』などで知られ、幅広い層から支持を得て活躍を続ける。記者会見では、創立当初から同学院が国際交流に積極的だった歴史に触れつつ、「学院が率先してやろうとしていることが、私にふさわしいと考えた」と就任を引き受けた理由を説明した。
就任後は、学生や生徒への講義、市民向けの講演などが予定されているが、姜氏は会見の中で、現在学校法人が試練に立たされていることを指摘した上で、「教職員にアイデアを積極的に提供し、気付いたことを忌憚(きたん)なく申し上げたい」と意欲を示している。また、栗林英雄理事長も「学院や地域社会の発展にご貢献いただけると確信している」と期待を寄せている。
今回の就任は、4年前に同学院主催の講演会で姜氏が講師を務めたことがきっかけで、学院側が顧問就任を打診していたという。また 熊本市出身の姜氏は今年1月から熊本県立劇場館長も務めており、「長崎、熊本で活動する中で古里・九州の地域発展にも貢献したい」と話している。