南極の米マクマード基地にある何ともロマンチックな名前の教会「雪の聖堂(Chapel of the Snows)。ここは、研究員たちのために50年以上にわたりチャプレンを備え、礼拝・ミサや集会の場を提供してきた。だが、研究員の削減と礼拝・ミサへの出席者の減少に伴い、ローマ・カトリック教会は、雪の聖堂が今後、カトリック教会には属さないとする決定をした。
ニュージーランドの公共ラジオ放送「ラジオ・ニュージーランド」は、このような辺境の地にカトリックの司祭の必要性はもはやなくなったと報じた。この研究施設を管理する全米科学財団(NSF)は、ニュージーランドのカトリック教区に対し、事業との関わりを終了することを求めていたという。
しかし引き続き、マクマード基地にはチャプレンが1人駐在する予定だ。南極におけるカトリック教会のコーディネーターであるダン・ドイル神父は、「人々から宗教性が徐々になくなってきており、マクマード基地や南極で働く人々の数の減少と、予算の削減も相まって、チャプレン1人で十分という決定に至りました」と語った。
夏に基地で働く人の数は、10年前の約2000人から、現在は1200人にまで減少している。ドイル神父は、初めて司祭になったとき、南極に行くことは夢であったという。
「南極で伝道するということは、世界の果てまで福音を伝えるという素晴らしい経験でした。私たちはかつて南極へ1日か2日かけて飛行し、基地から外れた所へ行きますと、そこでは氷河や歴史的な小屋を見ることができました。ダイバーが働いているときは、私は彼らのために補助員として氷の上に立ち、ペンギンの数を数えなければならなかったことも山ほどありました」
教会は南極を見捨てたのか――。いや、そうではない。亜南極の島々には他にも幾つかの礼拝堂が存在し、多くの研究ステーションには、宗教的な目的のための専用の部屋が備わっている。時には、輸送用コンテナを改造したものであることもある。また、南極のテラノバ湾にあるイタリアのマリオズッケリ基地では、カトリックの礼拝堂の建設計画がある。
ちなみに世界最南端の礼拝堂は、南極のコーツランドにあるアルゼンチンのヘネラル・ベルグラノII基地にあるカトリックの礼拝堂であり、全てが氷で作られている。