イタリア北部トリノの聖ヨハネ大聖堂で、十字架上で処刑されたイエス・キリストを包んだとされる「聖骸布(せいがいふ)」の一般公開が19日から始まった。5年ぶりとなる今回の公開は、トリノ近郊出身で、修道会サレジオ会を設立したヨハネ・ボスコ神父の誕生200年を記念して行われる。入場は無料だが全て予約制。すでに100万人以上が申し込んでいるという。AFP通信などが伝えた。
一般に「トリノの聖骸布」と呼ばれるこの布は、縦4・36メートル、横1・1メートルの亜麻布。カトリックで最も神聖視されるキリストの受難に関わる聖遺物の一つと数えられる。象牙色の布の上に、男性の全身像がネガ状に転写されて見え、この姿がキリストのものだとされている。布上に残された全身像の痕跡から、頭を中心に縦に二つ折りにして遺骸を包んだとされる。
14世紀半ばにフランスで発見されたこの聖骸布は、幾度かの変遷を経て、トリノ大司教によって管理されるようになった。国際的に注目されるようになったのは1898年。イタリアの弁護士でアマチュアカメラマンのセコンド・ピア氏が撮影したネガに男性の姿が映し出されていたことによる。
キリストの遺体を包んだ布であると信じられてきた一方で、その真偽については今なお論争が続いている。1988年に考古学の資料年代推定に用いられる放射性炭素測定で織布期を調べたところ、12~13世紀のものだということが判明した。イエス・キリストを包んだ布ではないとされ、世界中を驚かせた。
だが、同じ方法を使って別に調査をしたところ、13世紀には絶滅していた死海付近の植物の花粉が付いていることが判明し、織布期は紀元後1世紀とする意見も出された。仮に織布期が12~13世紀であったとしても、どのような材料や方法で作られたのか、映し出される男性像が誰であるかなどは謎のままである。
前回2010年の公開時には、250万人が観覧した。前教皇のベネディクト16世も訪問し、「その表情は神の顔をそこに見出すように語り掛ける」と感想を述べている。今回も6月20日と21日に現教皇フランシスコがトリノを訪問し、聖骸布を見る予定。なお、ローマ教皇庁ではこれまで、聖骸布の真偽について判断を下していない。
聖骸布の公開は、6月24日までの約2カ月間。午前7時半から午後7時半まで毎日公開される。インターネットでの予約が必要。通常は一般公開されていないが、同じくトリノにある聖骸布博物館でレプリカを見ることができる。