1965年3月7日、米アラバマ州セルマで起こった「血の日曜日」事件を題材に、米国の公民権運動を導いたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を描いた映画『セルマ(Selma、原題)』の邦題が、『グローリー / 明日(あす)への行進』に決定した。シネマトゥデイなど複数の映画関連サイトが伝えた。
本作の舞台は、公民権運動が盛り上がりを見せる1965年の米国。バプテスト派の牧師であるキング牧師の指導の下、約600人が黒人の選挙権を求め、セルマからモンゴメリーへのデモを決行した。だが、白人知事率いる警官隊が、こん棒や催涙ガス、むちなどを使い、デモを阻止し、行進はわずか数ブロックで終わってしまう。しかし、その暴力的な鎮圧の様子はテレビで広く報道され、歴史を動かす大きなうねりとなっていく。
キング牧師を扱った本格的な映画は本作が初めて。主演は、『リンカーン』や『大統領の執事の涙』などで知られるデビッド・オイェロウォ。さらに、『グランド・ブダペスト・ホテル』にも出演しているトム・ウィルキンソンが、黒人の公民権と投票権を認めた第36代米大統領リンドン・ジョンソンを演じる。
昨年11月に、ロサンゼルスで開かれたAFIフェストで初上映。昨年のクリスマスに、ロサンゼルス、ニューヨーク、アトランタで限定公開され、今年1月に晴れて北米全域の劇場で公開された。第72回ゴールデン・グローブ賞では作品賞、主演男優賞、監督賞、歌曲賞の4部門、第87回アカデミー賞では作品賞と歌曲賞の2部門にノミネート。主題歌となった「Glory」は、両賞で受賞を果たした。
先月7日は、「血の日曜日」からちょうど50年。バラク・オバマ米大統領はこの日、セルマを訪れ、公民権闘争の精神をたたえ、若者らと共に行進した。この式典は、事件の舞台となった橋のたもとで開かれ、オバマ大統領やミシェル夫人、ブッシュ前大統領夫妻、また50年前の行進に実際に参加したジョン・ルイス下院議員らが出席した。米国初の黒人大統領であるオバマ大統領は、「行進はまだ終わっていない」と述べ、差別撤廃のために努力し、自身の大統領就任への道を開いた先人たちへ敬意を表した。
米国では、エイブラハム・リンカーン大統領(当時)の奴隷解放宣言により、1865年に奴隷制が廃止。その後、キング牧師らによる運動が後押しとなり、1964年に公民権法が成立、法的な人種差別制度が撤廃された。しかし、米国において人種差別はいまだに根強い社会問題。昨年には、無抵抗・無防備の黒人男性が白人警官によって殺害される事件が相次いだことで、再び世界中の注目を集めた。
映画『グローリー / 明日(あす)への行進』は、6月よりTOHOシネマズシャンテほか全国で公開される。
■ ゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞を受賞した本作の主題歌「Glory」