今月全米で公開された、旧約聖書の「出エジプト記」を題材にした映画『エクソダス:神と王』が、歴史的な記述が不正確だなどとして、エジプト国内での上映が禁止された。エジプト政府文化省が28日までに発表したと、共同通信などが伝えた。
ジャビル・アスフール文化相は、同映画が「シオニストの観点から描かれている」と非難。シオニストの立場に立ち、歴史的な出来事を偽造していると批判した。旧約聖書には、モーゼがエジプトで虐げられていたイスラエルの人々を率いて、紅海を割り対岸へ渡ったとあるが、エジプト当局はこの出エジプトの場面などに複数の誤った描写が含まれていると主張している。
同映画は、3000年以上前、エジプトで奴隷の状態にあったとされるユダヤ人の脱出を描いたもの。同じ内容を描いた1956年公開の映画『十戒』は、チャールトン・ヘストン、ユル・ブリンナーが出演し、アカデミー賞7部門にノミネート、特殊効果賞を受賞した名作として名高い。本作品でのモーゼ役は米俳優のクリスチャン・ベールが演じ、古代エジプトの君主であるファラオのラムセス2世には、オーストラリア人俳優のジョエル・エドガートンが起用された。
エジプトでは今年3月にも、旧約聖書に描かれている大洪水の場面を描いた米映画『ノア 約束の舟』について、イスラム教の教えに反して預言者ノアを偶像化したとして、宗教権威機関が上映を禁止すべきだとする声明を出した。モーゼもノアも、キリスト教だけに関係するのではなく、イスラム教でも預言者として崇められており、描写することなどがタブーとなっているのだ。
映画『エクソダス:神と王』は、日本でも来年1月30日から全国の劇場で公開される。