「基地のない沖縄をめざす宗教者の集い」第6回講演会が22日、カトリック大阪大司教区カトリックセンター「サクラファミリア」(大阪市北区)で開催された。「沖縄辺野古新基地建設の抗議船長は今」と題し、金井創(はじめ)氏(日本基督教団佐敷教会牧師・沖縄キリスト教学院大学講師)が講演を行った。
初めに、カトリック大阪大司教区社会活動センター「シナピス」のセンター長である神林宏和司祭が、主催者代表として開会のあいさつをした。今回の参加人数が50人を超える程度と、予想していた来場者数を下回ったことを受け、神林司祭は「大阪でこれくらいしか集められなかったということは、来ていただいた皆さんにも申し訳なく思いますが、現実ですからしっかりとそれを受け止めていきたい」と述べた。
その後、金井氏が約1時間半にわたって、現在の沖縄の情勢を交えつつ、そもそも沖縄でどうしてこういうことが起こっているのか、沖縄における米軍基地の問題とは何なのかについて、左右の壁に映し出されたスライドを使って詳しく解説した。
その中で金井氏は、今月16日に開票された沖縄県知事選に言及。辺野古の基地建設は認めない、許さないということを掲げた無所属新人の翁長雄志(おなが・たけし)氏が、現職の仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)氏を抑えて、10万票の差を付けて勝利した経緯を、辺野古新基地建設反対の立場から説明した。
「今回の選挙は、保守も革新もない。元自民党の保守の政治家の選挙を真っ先に支援したのが共産党だった。これが沖縄の今の情勢です。保革一緒になって、オール沖縄で基地を撤去する、新しい基地は作らせない、そういう県民の意志がこの新しい知事の誕生につながっています」と金井氏は指摘した。
そして金井氏は、沖縄を変える一つの大きなきっかけになったという、昨年12月27日に起きたある出来事について語った。
その日、東京へ出向いていた仲井眞知事。沖縄では、知事が辺野古埋め立てについて承認を出すかどうかが最大の関心事となっており、約2千人が沖縄県庁へ駆け付けていた。そこへ知事が埋め立てに承認を出したという報道が伝わると、一転、怒りの抗議集会に変わり、千人を超す人たちが県庁のロビーを埋め尽くし、2時間以上にわたって抗議の座り込みを行ったという。
また金井氏は、沖縄のさまざまな現状を説明した上で、辺野古の埋め立て反対運動がこれまでと大きく違ってきたと語った。
「今までは県内では、いろんな反対の気持ちもあるだろうけれど、職場や学校や家ではそれを口にはできないという空気が非常に強く、辺野古のことは話題にすらできないという状態でした。まして、辺野古に県民がやってくるということはとてもまれでした」
ところが、今年になってからは事態が変わった。県民が用意されたバス2台、あるいは3台に乗って100人以上の人たちが、毎週入れかわり立ちかわり辺野古にやってくるようになったという。そして、今、陸に座り込み、あるいは海に出て抗議を行うメンバーの中には、沖縄県民が増えているという。
「ついに沖縄の人たちが立ち上がった。これが今までの運動と質的に決定的に違うことです。それは本当に底力になっていくと思われます」と金井氏は語った。
その後、主催団体や協賛団体の人々があいさつ。その中で、大阪宗教者9条ネットワークの鈴木弘純氏(浄土宗呑海寺住職)は、先日の沖縄知事選の落選候補に票を入れた有権者のことに触れ、「どういうお考えの方が(票を)入れられたのか。兵隊さんがおってくれるからおまんま食えるんやという人たちがたくさんいてはりまっせということ。『その人たちのことを考えずに、戦争はいかん、9条改革したらいかん、とだけを言うとったんではいかんのと違いますか』と言われると、私は答えに困る。そのことをしかと胸に置きながら、新しい選挙に臨んでもらわなあかんのと違うやろか」と自身の見解を示した。
職場の同僚と一緒に来たという京都府の教師(20代・女性)は、「今、沖縄の人たちはどう思っているのか、こういうところで聞いた生の声を生徒に伝えていきたい。今日はすごく勉強になりました」と語った。
また、「基地のない沖縄をめざす宗教者の集い」の世話人の一人、武田隆雄氏(日本山妙法寺僧侶)は、「なんとか皆さんの気持ちが集まって、基地がなくなって、いい方向へ行くように努力したい」と真剣な面持ちだった。