1905年に来日し、滋賀県の近江八幡で建築設計会社・メンソレータム(現在の近江兄弟社メンターム)で知られる製薬会社・医療福祉・教育と幅広い事業を展開した米国出身の伝道者ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。その彼が1964年に83歳で召天してから、今年で50年を迎えた。
公益財団法人近江兄弟社(滋賀県近江八幡市)では、ヴォーリズ召天50年記念事業として、記念書籍2冊をこのほど発行した。1冊目は4月22日にサンライズ出版から発行された『「漫画」W・メレル・ヴォーリズ伝 隣人愛に生きた生涯』で、もう1冊は5月13日に発行された岡田学編『神の国の種を蒔こう キリスト教メッセージ集』(新教出版社)である。
漫画『隣人愛に生きた生涯」は、ヴォーリズの生涯をより多くの人々に知ってもらおうと発刊されたもので、近江兄弟社と同社グループの湖声社による監修と宮本ユカリ氏の漫画により、その生涯をわかりやすく描いている。同社によると、同書は2001年に滋賀県企画課による企画で発行された『滋賀の20世紀 ひと・もの・こと』に収録されていた漫画に加筆・編集を施し、巻末にヴォーリズの生涯を写真でたどるミニアルバムを加えたものだという。近江兄弟社は「『隣人愛に生きたヴォーリズの生涯』から学んでいただく一助になれば」としている。
一方、『神の国の種を蒔こう』は、明治末年に創刊した雑誌「湖畔の声」からキリスト教に関する寄稿を選んで編まれたもので、ヴォーリズがキリスト教に関する考えを本格的に述べている「一粒の信仰」というエッセイもあわせて収録されている。監修はヴォーリズに関する著書も多い国語学者の木村晟(あきら)氏(駒澤大学名誉教授)が務めている。
新教出版社は公式ウェブサイトで同書について、「本書は、そのヴォーリズの多彩な活動の中核にあった剛毅なキリスト教信仰を伝える珠玉のエッセイ70余編や、自伝的エッセイ『一粒の信仰』等を収録。執筆時期は明治末年から戦後にまで及ぶ。本書を通して初めて、激動の時代をひたすら神の国を目指して走った一信徒の姿とその志を追うことができるようになるだろう」と紹介している。
また、大阪では、5月17日、6月21日、7月19日(いずれも土曜)の午後1時から同2時半まで、NHKカルチャー梅田教室で、一粒社ヴォーリズ建築事務所執行役員の芹野与幸氏を講師に、「明治・大正・昭和を駆け抜けたW.M.ヴォーリズ物語 ~没後50年を覚えて~」という講座が開催される。事前申し込みが必要。詳細はこちら。
一方、2月1日には、近江兄弟社グループの主催により、近江八幡市内にあるヴォーリズ平和礼拝堂で、「未来につながるキリスト教精神」と題し、クリスチャンで経済学者の浜矩子氏(同志社大学教授)を講師に、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ召天50周年記念講演会が行われた。