近日公開される聖書のノアの箱舟をモチーフにした映画『ノア 約束の舟』(原題:Noah)のダーレン・アロノフスキー監督は、同映画が大変な論争を巻き起こしているという世評に対し、今月6日、米バラエティー誌に対して、「別に何も論争は起きていない」と答えた。アロノフスキー監督はこの日、映画にインスピレーションを得た芸術作品が展示されている「Foundations of the Deep: Noah and the Flood(深淵の礎:ノアと洪水)」展を見に来ていた。
『ブラック・スワン』や『レスラー』の映画監督も務めたアロノフスキー氏は、同映画を信者のためにも未信者のためにも制作したと付け加え、未信者の宗教的な映画の鑑賞に対する偏見を打ち破ることに特に熱意を注いだと言う。
「私は、未信者の人、または信仰の薄い人たちにこの映画を見てもらいたいと思っている。たくさんの人が『えー、聖書に基づいた映画なんて見たくない』と思っているだろうが、我々は全ての予想をはるかに超える作品を作った。この映画の出だしを見るだけでも、それは見て取れるだろう。この展示会もその一環として行われている」と語る。
アロノフスキー監督は、この映画が聖書の創世記の記述から外れ、監督が自身の利益のためにノアの物語を利用したという、ほとんどまだ映画を見ていない福音派の間で広まっている懸念を一蹴した。「この論争は、未知のものに対する恐れや、誰かが聖書の物語を悪用するのではないかという恐れから来ている。映画を実際見たら、それは全てなくなるだろう」と主張する。
今月上旬、米アズサパシフィック大学所属物語研究所のバーバラ・ニコロージ・ハリントン所長は、映画の最終カットは見ていないが、脚本家で監督のアロノフスキー氏を「人口過剰問題や環境保護などの個人的な運動のために聖書を食い物にした。パラマウント・ピクチャーズは、『ハリーポッター』に対しては決してしないことを『ノア』に関しては平気で行う」と批判した。
聖書的な基準で消費のあり方を考える米グループ「フェイス・ドリブン・コンシューマー」が先月行った調査結果によれば、映画『ノア』について2月末に出た米ハリウッド・リポーター誌の記事は読んだが、映画は見ていないという5000人の米国人の内、聖書からテーマを得ている映画が、聖書の中心的なメッセージをハリウッドのものとすり替えられ、世間一般にうけるものに作り変えられた場合、98%がそれに「満足しない」と答えている。
映画『ノア』の制作会社パラマウント・ピクチャーズは、この調査結果を「誤解を招く」と批判している。
先月末、パラマウント・ピクチャーズは、この映画の筋が、ノアの物語の「本質・価値観・品位」に忠実ではあるが、映画制作者たちが「芸術的な変更」を加えたことに対して了承を得るための責任放棄声明文を映画に付け加えた。
その声明文は、「芸術的な変更は加えましたが、この映画は世界中の何百万人もの人々の信仰の礎である(ノアの)物語の本質・価値観・品位は変えておりません」と宣言しており、今後全ての宣伝材料に載せられる。同声明文は、映画を鑑賞した人たちに、聖書の創世記に記されているノアの物語を読むよう勧めて最後を結んでいる。
アロノフスキー監督はまた、1997年のある超大作映画に刺激され、パラマウント・ピクチャーズにノアの物語の映画化を提案したと言う。
「タイタニック号ほど有名ではないかもしれないが、少なくとも2番目に有名な船だというのが、僕の宣伝文句だった」と談笑する。
ラッセル・クロウが主演し、ジェニファー・コネリーがノアの妻ナアメを、ノアの息子の嫁イラをエマ・ワトソンが演ずる映画『ノア 約束の舟』は、今月28日(日本は6月)に公開される。