その後4人のパネリストによる「公共性の中で宗教が排除されている」問題に関するディスカッションが行われた。宗教が公共性にどのように関与していくかについて、板井氏は宗教とボランティアをとらえる視座として、A(公的機関との協働あり、布教・教化活動あり)、B(公的機関との協働なし、布教・教化活動あり)、C(公的機関との協働あり、布教・教化活動なし)、D型(公的機関との協働ない、布教・教化活動なし)の4つの型から議論を広めていくことが有効ではないかと述べた。
川上氏は「不安に寄り添うのが私たち(宗教者)の使命である」とし、宗教間が協力し、和解の場を形成していくことで、たとえば仏教のお寺で法話を牧師が行うなどの協力した活動が、公共社会に宗教者の果たす役割を良く伝えていけるのではないかと述べた。また震災に伴う原発の問題については、キリスト教会の中でも「中立の立場」を取る指導者らと「反原発」を明確に訴える指導者らが存在すること、宗教多元主義者はキリスト教会内ではあまり尊重されていないことを指摘した。川上氏は「生きる意味」を社会に伝えていくためのキリスト教の役割として「キリスト教は歴史の宗教であり、歴史を前に出していかなければなりません。生きる方向と意味を歴史の中で提示していく役割があります」と述べた。
山根氏は「社会に有用な人材を輩出していかなければならない。自ら皆さんを何とかしなければならないという責任をもって、困っている人がいたら助けたいという人材を多く輩出していくことが、宗教が公共性を確保していくことにつながっていくのではないか」と述べた。
吉田氏は「日本では7~9割の家庭において、お寺で葬式を行うことが慣習になっている。しかし亡くなったときはお寺に、生きているときは自分の思うように生きている人が多い」ことを指摘した。その上で、「死んでいく者だからこそという発想で物を考え、震災を通して新しい社会、生きることの意味を提言していく必要がある」と述べた。
国際宗教研究所は1954年(昭和29年)に設立され、激しく変化する社会や宗教のあり方を的確に把握し、社会に対して宗教がどのような作用を及ぼしていくのかを見定めていくための情報交換と議論の場を提供すべく活動してきた。また宗教者災害支援連絡会は昨年4月1日、宗教者による被災者、避難者の受け入れについての情報を提供し合い、さらにその働きを拡充する仕組みを作るために生まれた。二つの団体は、宗教の可能性を市民に開き、そこに宗教研究者が有効に関与することを目指している。
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