もしサンタクロースの一家がバラバラになってしまったらどうなるだろうか。その疑問は先週米国と日本で公開となった3Dコンピュータアニメーション映画『アーサー・クリスマスの大冒険』が提起している。
映画はサンタクロースの息子アーサーと家族がクリスマスに世界中の子どもたちへプレゼントを渡す最高の方法をめぐって喧嘩になり、サンタと兄弟のスティーヴ、祖父がそれぞれバラバラになってしまうというストーリー。主人公アーサーの声は、英語版ではジェームズ・マカヴォイ(『X−MEN:ファースト・ジェネレーション』に出演)が、日本語吹き替え版ではウエンツ瑛士が務めている。
映画の共同プロデューサーを務めたクリス・ジュエン氏は、デジタルアニメーションが家庭の温もりがどこにあるのかをどのように伝えているかを米クリスチャンポスト紙(CP)のインタビューで説明した。
CP:あなたは多くのアニメーション制作に関わってきましたが、そもそもアニメのどの部分に魅力を感じたのですか。
ジュエン:「ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス」でアニメ制作に携わって視覚的効果を学んだのが始まりで、結局それがアニメに関わるようになったきっかけだったんだ。彼らは「ザ・ポーラー・エクスプレス」という映画を作ったんだけど、その制作過程が好きだったんだ。僕はそこで学んだことを活用し、そして夢中になった。アニメは多岐にわたった分野であって、多種多様な物語に惹きつけられたんだよ。
CP:アニメーション技術は漫画からコンピューターグラフィックまで年月を経て進化してきましたが、デジタル映画制作では、これらの間で表現の形式はどのように異なるのでしょうか。
ジュエン:ほとんどのものはデジタルアニメーションで制作できるんだ。ただし、セットを使って映画を撮影するよりも不自然さが出てきてしまう。現在のコンピュータグラフィックは徐々に進化して、現実に近くなってきていて、僕たちはキャラクターに継ぎ目のない本物のような動きをさせることを目指しているんだ。
CP:キャラクターを本物の人間のように動かすためには、どのような努力が必要なのでしょうか。
ジュエン:僕たちは制作者に俳優たちの演技を撮影した参考ビデオを見せるんだ。例えば「アーサー・クリスマスの大冒険」だと、妖精が自転車を包装している場面があるんだけど、デザイナーのために実際に自転車を包装する様子を撮影したんだ。そういった細かなところまで配慮することが必要で、制作者たちはそれに熱中しているんだよ。
CP:最新映画「アーサー・クリスマスの大冒険」はクリスマス映画に相応しいものだと思いますが、既にたくさんのクリスマス映画がある中で新作を出すにあたって、難しいことはありましたか。
ジュエン:物語の複雑な部分に真剣に取り組んだ結果、良いものが出来上がるんだ。僕たちはクリスマス映画を作ろうとは考えないで、サンタクロースが実際に一晩で全ての子どもたちにどうプレゼントを渡すのかを考察したんだ。この任務を遂行するという神話を通して、とても賢い現代の子どもたちの質問に答えたかったんだよ。
CP:サンタクロースの息子アーサーと家族の問題が映画の中心的なテーマになっていますが、なぜ家族はそんなに大切だと思いますか。
ジュエン:多くの素晴らしい古典的なクリスマス映画は家族を扱っている。この映画の中の家族の力というのは、誰かとどのような関係が築けるかということなんだ。キャラクターはとても多様で、クリスマス家には現代の若者から老人までいるんだ。例えば、おじいさんのサンタはたくさん間違ったことを言うんだけど、人々は笑って彼と関係を築くんだよ。僕たちにはそんな家族がいて、あなたが信じられないことをしている時も誰かが愛してくれているんだ。
CP:多くの家族が『アーサー・クリスマスの大冒険』を観に行くと思いますが、どのようにして大人と子どもの両方を楽しませますか。
ジュエン:それは僕たちが考える最も難しいことの一つなんだ。これはファミリー向け映画だけど、バランスを保つことがとても難しいんだ。もし大人向けか子ども向けのどちらかに偏ったなら、観客は入らないよ。子どものための映画だということが最も重要なんだ。不器用なアーサーをユーモラスに表現したりね。しかし、大人にとっても不適当なものにすることはできないんだ。これは長い間議論されている問題なんだよ。
CP:キリスト教はクリスマスでどのような役割を果たさなければならないのでしょうか。
ジュエン:僕はクリスチャンだから、クリスマスにはイエスの聖誕に焦点を当てるよ。キリスト教的精神はクリスマスにあると思うんだ。でも僕たちはそれを見失っている。子どもたちが信仰よりも休日であることに注目して、クリスマスの意味が薄れてしまっているんだ。だから僕は子どもたちにその重要性を教えると同時に、自分自身も忙しさにかまけてキリストを見失っていないかを確認しようと思うよ。交通量が多くなる休日に、家でくつろぎながらクリスマス本来の意味を思い出すのがいいんじゃないかな。