アフリカ大陸の中央部、サハラ砂漠の南縁に位置するチャドは、イスラム教が支配的な北アフリカとキリスト教が広がるサハラ以南のアフリカを結ぶ「交差点」のような国だ。近年、隣国スーダンでの凄惨な内戦により、膨大な数の難民がこの地に押し寄せている。政治的な腐敗と経済的な困窮にあえぐこの国で、キリスト教徒を取り巻く環境は、イスラム過激派の台頭と部族社会の圧力により、かつてなく厳しさを増している。
チャドのキリスト教徒は、大きく2つの状況に置かれている。南部を中心とする地域では、人口の約35%を占めるクリスチャンが比較的自由に活動しているように見える。しかし、政府の腐敗や独裁的な政治体制下において、教会指導者が正義を訴えれば、治安当局からの監視や嫌がらせの対象となる。彼らは「発言権を持たない市民」としての沈黙を強いられているのが現状だ。
多くの厳格な部族社会を有する国で言えることだが、より深刻なのは、北部や東部のイスラム教地域における改宗者が直面する厳しい現実だ。彼らにとって、信仰の告白は単なる宗教の変更ではなく、部族や家族への裏切りと見なされる。
社会的なつながりが生存の鍵となるこの地において、改宗は家族からの勘当、相続権の剥奪、地域社会からの追放、さらには強制的な離婚や身の危険を意味する。最も親しい家族こそが、一族の名誉を守るために最も激しい迫害者となるケースが後を絶たない。
近年、チャド西部ではボコ・ハラムやイスラム国西アフリカ州(ISWAP)といった過激派グループの活動が活発化している。彼らは村々を襲撃し、キリスト教徒を標的にして殺害や誘拐を行っている。かつては比較的保たれていた宗教間の共存は、過激主義の浸透と、難民流入による社会不安によって揺らぎ始めているのだ。
しかし、希望の光もまた、この困難の中に輝いている。ある現地の教会リーダーは語る。「難民キャンプの悲惨な状況の中で、教会は愛の手を差し伸べています。イスラム教徒の難民たちも、クリスチャンが見返りを求めずに水や食料を分け与える姿を見て、心の扉を開き始めているのです」
絶望的な状況が、かえって人々の心を真理へと向けさせ、これまで福音が届かなかった部族の中にも、新しい信者が起こされつつある。
毎年ひどい迫害国ランキング50を発表するオープン・ドアーズのワールド・ウォッチ・リストによると、チャドは今年48位にランクされ、迫害が激化している国の一つとして警告されている。この地の兄姉たちが、テロの脅威や部族の圧力の中でも恐れることなく、愛と真理の灯台として福音を語り続けることができるように祈ろう。
孤独な改宗者たちが迫害から守られ、教会という新しい家族の中で支えられるように。そして、政治的な安定と平和が訪れ、教会が国全体の癒やしのために用いられるように祈っていただきたい。
■ チャドの宗教人口
イスラム 55・3%
プロテスタント 22・5%
カトリック 18・6%
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