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逆境は人生を開く 穂森幸一

2025年11月27日21時20分 コラムニスト : 穂森幸一
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神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し、そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる。まことに、神はあなたを苦しみの中から誘い出し、束縛のない広い所に導き、あなたの食卓には、あぶらぎった食物が備えられる。(ヨブ記36:15、16)

私は高校を卒業してすぐ神学校に入り、伝道者を志しました。しかし、牧師として20年以上仕えていた教会を47歳の時に追い出されました。所属していたのはあまり名前が知られていない小さな教派の教会でした。

何とか教会を成長させたいと思い、米国に渡って教会成長プログラムを学び、それにチャレンジしました。伝道活動にもさまざまなアプローチを試みました。信徒獲得に役立つと思ってコンサートや講演会を何度も開催したのが、一部の人には迷惑だったのかもしれません。

自分の策に溺れ、傲慢(ごうまん)になっていたかもしれません。今にして思えば、私の行為は「出る杭(くい)」そのものでした。打たれて当然という結果だったと思います。

一部の役員から「牧師の姿勢を正す」という決議文が突き付けられ、「牧師は教会の資金を横領している」という怪文書が信徒の家庭に届けられたりしました。そこで、私は信頼しているクリスチャンの弁護士を訪ね、会計簿、決算書などの必要書類を見せました。

「先生が潔白なのは書類を見なくても分かります。法廷闘争をすれば、間違いなく勝てます。しかし、法律では慰謝料という形の現金を払うことでしか決着をつけられません。また、請求しても、小さな教会の会計状況では払えないでしょう。それよりも、そういう所とはたもとを分かって、新しい道を探ってはいかがですか」と勧められました。

家族5人、牧師館を出てアパートに移り、新しい出発を始めました。ホテルのチャペル結婚式で生計を立て、家庭集会という形で礼拝を守りました。牧師として活動しようとすると、必ず「どこの教会ですか」とか「どの教派ですか」と聞かれて返答に困りました。

そこで以前、研修で訪れていたカリフォルニア州の教会にどうすればいいのか手紙を書きました。すると、米国の宣教団体の宣教師、派遣牧師という肩書にすればいいということで、伝道活動に関しては物心両面から支えてもらいました。

教会を追い出されたとき、気にかけてくださり、精神的に支えてくださったのは、カトリックの方々でした。カトリック教会の行事の時に、司教さんが「教会は異なりますが、友人です」と言って紹介してくださいました。教派の束縛から解放されていたために、プロテスタント教会とカトリック教会の懸け橋になろうと思い、「牧師神父の会」のために働くことにしました。

鹿児島で神道、仏教、キリスト教、諸教が宗教、教派を超えて共に協力する宗教者懇和会が立ち上がったときは、真っ先に手を挙げました。これもひとえに教派を離脱していたからできたことです。平和運動を通して、仏教の和尚さんや神主さんたちとも友人になることができました。

理不尽な嵐の中で立ち往生し、いっそのこと人生を諦めた方が楽になるのではないかという心境になるのは、世の常です。会社で同僚に手柄を奪われ、出世の道が閉ざされた人、上司のミスを押し付けられて左遷された人、濡れ衣を着せられて退職を迫られ、転職せざるを得なかった人など、この世の中には、納得のいかない悔しい思いをしている人々がいます。しかしそのような逆境が後に、人生が開かれる転機だったと述懐する人が少なくないのです。

明治維新の立役者としてヒーロー扱いされる西郷隆盛ですが、生涯3度の流罪を経験しています。子孫の話によると、「活躍していた期間は短くて、人生の大半を島流しとか牢獄で過ごしている」ということです。しかし、後世に残る人生訓や、新政府での政策構想の大半は、獄中で練られたものだといわれます。また、南の島で獄中に差し入れられたのは漢文の聖書だったともいわれ、逆境の中で、聖書が光となった可能性も高いといわれます。

使徒パウロほど、広範囲で壮絶な働きをした伝道者はいないと言っても過言ではありません。新約聖書は27巻ですが、そのうちの13巻はパウロが著者となっています。しかし、パウロはそのほとんどを牢獄に捕らえられているときに著しています。逆境の中でも、神の働き人としての役割を果たしたのです。

最近は宇宙開発の進歩が素晴らしく、宇宙空間に天文台が設置され、宇宙の果てと呼ばれる空間の写真撮影が行われているそうです。ある学者が、宇宙の縮尺図面を見ながら宇宙の働きについて考えているときに、あることに気付きました。それは、宇宙が脳細胞の働きを表す図面にそっくりであるということです。

この話を聞いて私が考えたことは、地球の生命体はそれぞれの中に宇宙を持っているのではないか、実は人間一人一人が宇宙、すなわち神とつながっていることの証拠ではないかということです。本来人間は、神と直接交信ができたのではないでしょうか。人類の罪のためにつながりが断たれ、預言者という選ばれた人のみが交信することになったのではないでしょうか。

私たちは神とつながっていること、また、神は身近な存在であることを忘れてはいけないと思います。逆境の中にいるときはとてもつらいですが、霊性が高められるのではないでしょうか。つぶやくことも祈ることも、確実に神に届いていることが分かるなら、不用意に自分の運命を呪い、他人の悪口などを口にしてはいけないのではないでしょうか。どんな時にも失望せずに、最後まで希望を持ち続けることが求められています。

パウロは「そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです」(ローマ5:3、4)と獄中で記しています。彼が神の聖霊に生かされていたために、逆境体験が多くの人々の慰めになったのです。

理不尽な状況に追い詰められることがあっても、宇宙の支配者である神との結びつきに気付くときに、新しい展開が開けていくのではないでしょうか。

順境の日には喜び、逆境の日には反省せよ。これもあれも神のなさること。それは後の事を人にわからせないためである。(伝道者の書7:14)

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◇

穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

株式会社カナルファホームページ
穂森幸一牧師のFacebook

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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