第4回ローザンヌ世界宣教会議が22日、韓国・仁川(インチョン)の松島(ソンド)コンベンシアで開幕した。世界200以上の国・地域から約5千人のキリスト者が一堂に会し、28日までの1週間にわたる会期中、世界宣教に関するさまざまな重要課題について話し合う。
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開会式は「祝賀と振り返り:世界の教会の集い―神の宣教と共に」と題され、ローザンヌ運動総裁のマイケル・オー氏、オー氏と共に共同組織委員長としてこの大会を準備してきた韓国ローザンヌ委員会委員長のイ・ジェフン氏(オンヌリ教会主任牧師)の2人がメッセージを伝えた。
今大会が重要な3つの理由
イ氏は冒頭、開催地である仁川について、プロテスタントの宣教師が韓国に初めて福音を持ち込んだ都市であることに言及。「そして今、神の驚くべき恵みと働きを求め、世界中から5千人もの福音派のリーダーたちが、その同じ街に集まりました」と述べ、その歴史的意義を語った。
また、1910年のエディンバラ宣教会議で米国人宣教師のサムエル・モフェットが、1907年に起こった平壌リバイバルについて述べた言葉を引用し、今大会への期待を述べた。その上で、今大会が重要である理由を3つ挙げた。
第一の理由は、第4次産業革命ともいわれるハイパーコネクテッド時代における初の世界宣教会議であること。イ氏は次のように語った。
「(SNSなどの発展により)私たちはよりつながったにもかかわらず、より孤立し、周縁化しています。以前より、より効率的にコミュニケーションができるようになったにもかかわらず、私たちは政治的・文化的に偏向しつつあります」
「私は、今が大いなる使命を果たすための努力におけるテクノロジーの役割について、批判的に考える重要な瞬間であるだけでなく、何が正しく、何が正義であるかについて、この世代に預言的に語るべき時であると信じています」
第二の理由は、世界宣教が多極化した時代における初の世界宣教会議であること。イ氏は、世界宣教の役割を果たす場所が、「グローバルノース」「グローバルウエスト」から「グローバルサウス」「グローバルイースト」に移りつつあると指摘。英国人宣教学者のクリストファー・J・H・ライト氏が、「私たちは、初代教会で見られたような、関係的で、協力的で、互恵的な宣教スタイルを前進させる必要がある」と述べていたことを語った。その上で、今大会の中で協働のための話し合いが持たれることに期待を示し、「私たちは共に働くときにより良い実りを得るのです」と伝えた。
第三の理由は、複数のデジタル世代が混在する時代における初の世界宣教会議であること。今大会には、ベビーブーマー世代(1946~64年生まれ)、X世代(65~80年生まれ)、ミレニアル世代(81~96年生まれ)に加え、Z世代(95~2010年生まれ)に属する人々が参加している。イ氏は、特に若い世代の参加者に向けて「私たちはあなたがたが必要です」と呼びかけた。
その上で、世界宣教の新しい道を見いだすため、参加者が互いに励まし、力づけ合うよう促し、「(世界宣教は)少数の天才ではなく、謙遜で協力的な関係によって成されるのです」と強調した。
「教会が共にキリストを宣言し、示せますように」
オー氏は初めに、自身が韓国系米国人であることを紹介。母の信仰、また母の信仰を育んだ韓国の教会がなければここに立つことはなかったと述べ、メッセージを始めた。
「この大会は、勝利至上主義の瞬間ではなく、冷静な悔い改めと新たな決意の瞬間です」。オー氏は、第1回大会から50年がたった現在も、世界宣教は依然として困難な状況にあることを指摘。「私たちが依然として、世界において欠陥のある証し人であり、世界に対して欠陥のある宣教をしていることを認識します」と語った。
オー氏はこの50年間に、「未伝」の民族グループ9千以上に福音が伝えられてきたとし、特にアフリカやアジア、中南米で信じられないような教会の成長が見られたことを語った。また、新しい伝道戦略や神学、方法論が開発されてきたことにも触れた。しかしそれでも、それを上回る世界人口の爆発的な増加により、「福音を伝える速さは加速しているのではなく、減速しています」と述べ、宣教が十分ではない現状を話した。
また、「キリストの花嫁の評判は良くありません」と言い、キリスト者による不祥事の多さに言及。「ローマ人への手紙9章にあるように、福音のメッセージにつまずく人がいるのではなく、メッセージを伝える人につまずく人が多過ぎるのです。プライド、権力、不純なスキャンダルがあまりにも多く、教会を奪い、私たちの証しを危うくしています」と語った。また、SNSの発達により、「私たちの失敗はかつてないほど公になり、世界的に拡散し、見られるようになりました」と続けた。
その上で、「世界における福音の分かち合いと、世界におけるキリストの花嫁の評判という、この2つの軌跡があるからこそ、私たちは『教会が共にキリストを宣言し、示せますように』という歴史的な大会のテーマを受け入れ、その周りに結集する必要があるのです」と強調。自らに多くの欠陥があったとしても、福音のため、また「神の宣教の戦略」のため、自信を持って集まるべきだと話した。
オー氏は「神の宣教の戦略」について、「何をするか」ではなく「誰が担うか」が重要だと指摘。それを担うのは、「キリストの体」であり「主の民」であるキリスト者だとし、一人一人が大切であることを語った。しかし「ではなぜ、私たちはあまり効果的ではないのでしょうか」とオー氏。世界各地で素晴らしい働きが行われているにもかかわらず、宣教が進まない理由について問いかけた。
そして、今日の世界の教会における最も危険な「4単語の言葉」について語った。それは、「あなたは好きでない(I don’t like you)」ではなく、「あなたは必要ない(I don’t need you)」だとし、ミニストリー間の非協力や、さまざまな領域で活躍する一般信徒を宣教に取り込めていない問題を取り上げた。
「私たちは互いに好きで、親切で、礼儀正しく、尊敬し合っています。しかし、私たちは互いを必要としていません。私たちは自己中心的で、自信に満ち、自立しており、そして恐らくは利己的であるため、他者、他のミニストリー、他の企業、他の学校、他の教派やキリストの体の他の一部と協力することに、競争上の優位性を見いだせていないのです。このことが、ミニストリーの孤立、ミニストリー間の競争、財源を巡る争い、そして最終的にはキリストの体の非効率性と醜さにつながっているのです」
オー氏はまた、「キリストの体の非効率性の最大の理由の一つは、キリストの体全体を神の使命に取り込むことに失敗していることです」と指摘。「私たちはあまりにも長い間、私たちが手を差し伸べようとしている世界の人々と実際に隣り合っている、教会の99パーセントの人々に(宣教を)委ね、訓練し、祝福し、備えさせることを怠ってきました」と語った。
「私たちは、エペソ人への手紙4章12節で、全てのキリスト者はミニストリーの働きのために整えられるべきであると言われた神の戦略をないがしろにしてきました。一般の職場で働くあまりにも多くのキリスト者が、暗黙のうちに、あるいは明確に『あなたは必要ない』と言われてきました。教会の1パーセントに過ぎない牧師や宣教師が召命に応答しているのと同様に、全てのキリスト者を備え、世界の教会として99倍もっと効率的になりましょう」
その上でオー氏は、「神の宣教の戦略」において、キリスト者に求められていることは、「キリストを宣言し、示す」ことだと強調。悪の声がより大きくなり、悪がより目に見える世界になればなるほど、キリスト者はより声を上げ、その姿を現していかなければいけないとし、「恐れではなく、信仰を持ってキリストを宣言し、示すのです。傲慢にではなく、謙虚に。競争するのではなく、協力するのです」と伝えた。また、福音のメッセージは、「美しく、聖書的に、はっきりと、愛情を込めて伝えなければなりません」と語った。
さらに、世界中のキリスト者一人一人が、自分の知っている全ての人に福音を伝えても、世界には依然として福音を聞けない人々が何十億人もいることを指摘。世界のイスラム教徒、仏教徒、ヒンズー教徒の86パーセントは、キリスト者の知り合いが一人もいないとし、こうした人々のために派遣される宣教師が必要なことを語った。
最後には、「今日の世界では、キリストを効果的に示すことができていないために、キリストを宣言することが難しくなっているのかもしれません。しかし、もし私たちがグローバルな教会としてキリストを美しく示すことができれば、キリストを宣言することはより効果的になるでしょう」と述べ、参加者の宣教による協力を励ました。
大会本部は参加者に、SNSで「#L4CONGRESS」のハッシュタグを使って、大会の様子を多くの人々に分かち合うよう呼びかけている。フェイスブックやインスタグラム、X(旧ツイッター)などのSNSには既に、参加者がさまざまな投稿をしている。