賛美歌「アメイジング・グレイス」を歌うことは、心臓の血管機能の改善に良い影響を与えるかもしれない――。そんな研究結果が、最近発表された。
英キリスト教メディア「プレミア・クリスチャン・ニュース」(英語)によると、研究は、米ウィスコンシン医科大学の研究者らによるもの。歌うことが、冠動脈性心疾患のある高齢者の心臓の血管機能に対して、どのような効果をもたらすかを調査した。その中で、歌う曲によって効果に違いがあり、賛美歌として広く愛唱されている「アメイジング・グレイス」が、最も効果が高い結果になったという。
研究に参加した被験者(55~79歳)は、ウディ・ガスリーの「わが祖国」、ビートルズの「ヘイ・ジュード」、ドリー・パートンの「ジョリーン」、そして「アメイジング・グレイス」の4曲の中から2曲を選んで歌うよう求められ、選んだ曲をそれぞれ10分ずつ、最初の発声練習10分を含め、計30分歌った。4曲はそれぞれ、フォーク、ポップ、カントリー、賛美歌の各ジャンルの曲として設定された。
歌唱の前後に、心臓の血管機能を示す各種指標を測定したところ、「アメイジング・グレイス」の効果が最も大きく(22・3%)、「わが祖国」が最も小さかった(10・1%)。
研究者らは、今回の研究は被験者が65人と小規模の実験であるため、「非常に探索的な分析」であると前置きし、また「アメイジング・グレイス」と「わが祖国」の効果の差は統計的には有意でないとしつつも、得られた知見は、音楽療法における今後の研究のために「有益な仮説を生み出すかもしれない」としている。
その上で、「従来の運動への参加を妨げる身体的あるいは整形外科的な制限のある高齢者集団において、歌は利用しやすく安全な治療的介入として考慮されるべきである」と結論付けている。
「アメイジング・グレイス」は、元奴隷商人の英国人ジョン・ニュートン(1725~1807)が作詞した賛美歌。ニュートンは奴隷船の船長をしていたが、嵐による遭難の危機から奇跡的に助かったことをきっかけに回心し、後に牧師となった。「アメイジング・グレイス」は、牧師になった後の1772年に作詞したもので、今日でも定番の賛美歌として歌われ、親しまれている。
研究結果をまとめた論文「冠動脈疾患を有する高齢者における血管の健康に対する歌唱の効果」(英語)は、健康科学に関する査読前の論文を無料で公開しているウェブサイト「medRxiv(メドアーカイブ)」で、7月27日に公開された。