米首都ワシントンにあるウェスレー神学校の付属施設「ルイス教会指導者センター」が、2024年に教会のリーダーシップに影響を与える7つのトレンドをまとめた記事(英語)をホームページに掲載した。同神学校は米国第2のプロテスタント教団である合同メソジスト教会の系列神学校で、140年以上の歴史がある。
記事ではまず、第1のトレンドとして、プロテスタントの主流派(メインライン)の近年の大幅な衰退状況を踏まえ、「主流派の停滞」を挙げた。
「典型的な主流派の教会は、その期待と宣教モデルを調整する必要に直面している。主流派は、教団機関や教会機関から、神学教育やパラチャーチ組織に至るまで、あらゆるものを含む制度的インフラを、現在の実情に合わせて再調整する必要に直面している」
一方、第2のトレンドとして挙げられたのは「安定した財政」。教会が多くの課題に直面している一方で、「多くの証拠が、ほとんどの教会の財政状態が驚くほど強いままであることを示した」としている。
記事は、「レイク信仰献金研究所」の報告(英語)を引用し、米国の教会の23年の「収入の中央値」は「3年前から42パーセント近く増加した」と指摘。そしてこれは、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウン中にオンライン献金への移行が成功したことや、高齢の教会員からの献金が多かったことなど、複数の要因によるものだと推測している。
3番目のトレンドは「小さいことは良い」。ほとんどの米国人は比較的大きな教会に出席しているが、その一方で「小さく機敏で、高度に個人最適化された教会の形態は、ますます成長と発展の『新たな源泉』になっているようだ」とした。
「マイクロ教会や家の教会、小さなオンラインコミュニティーといった新しい形態は、多くの人が制度に不信感を抱いているこの時代に、紛れもない魅力を持っている。多くの伝統的な教会は、参加者のエネルギーを教会の組織構造を維持することに集中させているが、より小さなコミュニティーでは、人間関係の育成と個人の霊的成長に重点を置くことができる」
第4のトレンドは「信徒指導者の役割の拡大」。ルイス教会指導者センターの調査によると、多くの教会は専任の牧師を経済的に維持できないなどの理由で、ますます信徒指導者の指導力に依存している。
「教会のある部門では、牧会者として働く一般信徒の方が多い。例えば19年には、合同メソジスト教会の所属教会の12パーセントで、認定神学校の学位授与・非授与のいずれのプログラムに入学も卒業もしていない信徒牧会者が奉仕していた」
第5のトレンドは「脱教会世代の台頭」。特定の宗教と関係を持たない米国人とその子どもたちの増加が、さまざまな調査で報告されているとし、次のように述べている。
「キリスト教信仰は常に一代限りで消えてしまうとよくいわれる。今日、無宗教の親を持つ子どもたちは、彼らの両親とは異なり、教会とはほとんど、または全く関係なく育てられている。宗教的な記憶をほとんど持たず、信仰の実践から離れた、増加する脱教会世代の若者に訴えるためには、全く新しい福音的作戦図が必要である」
6つ目のトレンドとして挙げられたのは「日曜学校というキリスト教教育のモデルが直面する試練」で、日曜学校がインターネット時代に「行き場を失った」かもしれないという研究者らの疑念に触れた。
「インターネット時代では、子どもも大人も、より双方向的で参加的な学習方法に慣れている。多くの教会は、さまざまな学年別、年齢別のクラスを維持するために必要な若い家族層をもはや持ってはいない」
「日曜学校の先生やキリスト教教育の責任者たちは、家庭との関わり方を模索している。授業の頻度を減らしたり、別の時間に行ったり、世代間活動や奉仕関連の活動を増やしたり、家庭での信仰教育のために親の準備や動機付けを行ったりすることを試みている」
そして、最後の第7のトレンドに挙げられたのは「新たな信仰形成モデルの必要性」。「日曜日に教会の椅子に座っている人は、礼拝の要素、特に説教を通じて信仰が形成される」という長年信じられてきたことが、現在は試練にさらされているとした。
「この(礼拝を通じて)『徐々に信仰が形成される』というアプローチは、恐らく常に当たり外れがあった。しかし、教会出席がより散発的になっている現代では、その限界はさらに顕著である。多くの教会は、最も忠実な礼拝出席者でさえ、しばしば月に1、2回しか礼拝に来ないと報告している」
その上で記事は、信仰形成を支援する新たな方法として、04年に英国国教会で始まった「メッシーチャーチ(ごちゃ混ぜ教会)」運動を一例として挙げている。メッシーチャーチとは、大人から子どもまで、あらゆる世代の人々を集め、さまざまなことを行う取り組みで、通常は伝統的ではない教会環境で行われる。「米国メッシーチャーチ」(英語)は、次のように説明している。
「メッシーチャーチは、あらゆる年齢の人々が地元の教会を通じて共にキリストに属することを可能にします。それは、特に家族に適した教会の在り方ですが、全ての人を歓迎しています。それは地域の家族に合った時間と日に開かれ、これまで教会に属したことのない人々を特に歓迎します」
また、さまざまな宣教リソースを提供する「チャーチ・アンサーズ」の創設者で最高責任者(CEO)のトム・ライナー氏は、これとは別に「2024年の教会の9つの危険な問題点」(英語)と題したリストを提示した。
ライナー氏はこの中で、1)差し迫った問題の無視、2)スケジュールが複雑で多忙、3)完璧な牧師や過去への執着、4)伝道の欠如、5)スタッフの雇用慣行が時代遅れ、6)教理的逸脱、7)有害な教会員に対処できない、8)会堂のメンテナンスや修理の遅れ、9)教会内グループの軽視——を挙げている。
このうち、9番目の教会内グループの軽視については、「今日見られる明らかなトレンドの一つは、より健康的な教会は、スモールグループや日曜学校のクラス、コミュニティーグループ、ライフグループなど、グループに焦点を当てる傾向があることです。グループに参加する人は、より多くを与え、より頻繁に礼拝に出席し、より活動に参加し、より喜びを持って奉仕する傾向があります」としている。
ライナー氏はその上で、「これらの9つの問題点のいずれかまたは全てが、24年に津波を引き起こす地震となる可能性があります。手遅れになる前に、あなたの教会の問題点に対処することを祈ります」と述べている。