米国では、プロテスタント教会の多くの牧師が、現在の経済状況が教会に悪影響を及ぼしていると考えていることが最新の調査で明らかになった。
米キリスト教世論調査機関「ライフウェイリサーチ」は11日、同国の経済状況が教会に与えている影響についての牧師の見解をまとめた報告書(英語)を発表した。報告書は9月6日~30日に、同国内のプロテスタント教会の牧師千人を対象に行った電話調査に基づいている。
現在の経済状況が教会に及ぼす影響は?
それによると、牧師の過半数(52%)は、現在の経済状況が自教会に悪影響を及ぼしていると考えていると回答した。このうち45%は「やや悪影響を与えている」と考えており、6%は「非常に悪影響を与えている」と答えた。
これに対し、「やや良い影響を与えている」と考えている牧師はわずか5%で、「非常に良い影響を与えている」と考えている牧師は2%にすぎなかった。一方で、40%の牧師は、現在の経済状況は自教会に何の影響も与えていないと答えた。
「やや悪影響を与えている」とした回答者の割合は、2021年は34%で、この1年で11ポイント上昇したことになる。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた20年は43%で、それも上回る結果となった。一方で、リーマンショック後の09~16年は46~66%で推移しており、当時よりは少ない状況となっている。
献金の減少よりも支出の増加が影響か
ライフウェイリサーチのスコット・マコーネル所長は所見(英語)で、今回の結果は「外的経済要素」によるものであり、「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法」(CARES法)による一時支援の終了や物価・金利の上昇によるものだとした。
「経済状況に対する牧師の認識の悪化は、収入の減少よりも支出の増加によるものです」とマコーネル氏は指摘する。「前年比献金額の減少は、約4分の1の教会にとっては要因となっていますが、これは過去10年以上にわたり、教会が平均的にたどってきたものとほぼ同様の割合です」
地域別、規模別、教派別、男女別では?
地域別では、「非常に悪影響を与えている」または「やや悪影響を与えている」と回答する傾向が最も強かったのは、ニューヨークなどがある北東部だった。
規模別では、信徒数が50人未満の教会の牧師は、より規模の大きな教会の牧師よりも、「非常に悪影響を与えている」または「やや悪影響を与えている」と回答する傾向が強かった。
教派別では、保守派のチャーチ・オブ・クライストに所属する牧師が、「非常に悪影響を与えている」または「やや悪影響を与えている」と回答する割合が最も大きく、58%だった。その後に、長老派・改革派(57%)、メソジスト派(56%)、バプテスト派(54%)、ペンテコステ派(39%)が続いた。
男女別では、男性牧師(6%)に比べて2倍近い女性牧師(10%)が、現在の経済状況が自教会に「非常に良い影響を与えている」または「やや良い影響を与えている」と答えた。
2022年の献金は見込み通り?
22年の献金状況については、46%の牧師がほぼ見込み通りだと回答した。見込みを上回ると回答したのは23%で、見込みを下回ると回答したのは29%だった。
年齢別では、55~64歳の高齢の牧師(34%)の方が、18~44歳の若い牧師(25%)よりも多く、見込みを下回ると回答した。
教派別では、メソジスト派の牧師の41%が、ほぼ見込み通りだと答えており、バプテスト派(28%)、ルーテル派(27%)、ペンテコステ派(23%)などの他教派に比べ多かった。
2021年と比べて献金は増えた?減った?
21年との比較では、10人に4人(42%)の牧師が、22年の献金は21年と同程度と回答した。21年を上回ると回答したのは32%で、21年を下回ると回答したのは23%だった。
男女別では、男性牧師の35%が、22年は21年を上回る献金があると回答したのに対し、女性牧師は22%にとどまった。
人種別では、アフリカ系米国人牧師の36%が、22年の献金は21年を下回ると回答しており、白人牧師(22%)の1・5倍以上となった。
教派別では、ペンテコステ派の牧師の39%が21年を上回ると回答したのに対し、メソジスト派の牧師の29%は前年を下回ると回答した。