イスラエルの聖書協会は、イスラエルの人々の集団的、世代的トラウマに取り組んでいる。聖書協会のビクター・カリッシャー氏は「誰かがトラウマを経験すると、それを思い出させるものは全て、それを記憶している状況にその人を連れ戻すのです」と彼は言う。
「私たちの集団的な歴史的記憶には、ホロコーストがあります。また私たちは、エステル記にあるように、ハマンの民族浄化の悪巧みが打ち砕かれ、かえってイスラエルの根絶やしをもくろんでいた者らが一掃された物語をプリムの祭りで祝うのです。それは、私たちの民族物語であり、民族アイデンティティーの一部です。私たちはそれを子どもたちに教え、毎年祝っています。それが今、再び私たちの身に起こり、私たちはショックを受けています。子どもの首を切り落としたり、人を生きたまま燃やしたり、女性や少女をレイプしたり、想像もつかないようなことをするのは、あの時と同じ悪魔の仕業です」
「今イスラエルの教会は、トラウマを抱えた子どもたちや10代の若者たちのための聖書的リソースを求めています。聖書協会はそのような彼らのニーズに応えているのです。彼らは非常に困難な時を過ごし、多くの疑問を持っています。ロケット弾がそこらじゅうに落ちてきて、毎日サイレンが鳴っています。私たちは、彼らがこの状況を前向きに乗り越え、霊的に成長する手助けをしたいのです」
歴史の中で、イスラエル民族ほどの迫害を受けてきた民族は他にいない。
パウロは、ユダヤ人が担う霊的重責を理解して「それは、あらゆる点から見て、大いにあります。第一に、彼らは神のいろいろなおことばをゆだねられています」(ローマ3:2)と言い、さらには「彼らはイスラエル人です。子とされることも、栄光も、契約も、律法を与えられることも、礼拝も、約束も彼らのものです。父祖たちも彼らのものです。またキリストも、人としては彼らから出られたのです。このキリストは万物の上にあり、とこしえにほめたたえられる神です。アーメン」(ローマ9:4、5)と説明し、決してそれを小さく見積もってはいない。
人としては、ユダヤ人としてお生れになったキリストは、世を裁き治めるメシアとして来臨されるが、主は、第一義的には、ダビデの王座に就くイスラエルの王として再び来られる。この点で聖書の預言は、後出しジャンケンのように、後からいくらでもつじつま合わせができるような抽象的なものとは全く違う。それは極めて具体的なものだ。そういう意味で、イスラエルの建国という現代の奇跡は、歴史的にも極めて重要な聖書預言のマイルストーンといえよう。
悪魔は、そのイスラエル民族の終末的重要性をよく熟知している。歴史の中で、ユダヤ民族がこれほどまでの迫害を通らされたことの真相は、その重要性を知っている悪魔が「何としてもユダヤ民族を滅ぼし、神の計画をぶち壊したい」と暗躍した結果なのだ。
しかし恐れるには足りない。ハマンの悪巧みは、イスラエルの敵を滅ぼす結果となり、ホロコーストの民族浄化計画はシオニズム運動を加速させ、イスラエル建国の一因となったのだ。
つまり、終末期における自分たちの滅びが秒読み段階に入っていることを知っている悪魔が、どれほど悪あがきをして暴れようとも、全能の神の御手は、そのような悪の活発な増進さえもご自身の計画遂行のために用いることができるのだ。
それはキリストの十字架の御業を見ても一目瞭然だ。キリストを亡き者にしようと躍起になった悪魔は、結果的に、神の完全無欠な贖(あがな)いの業を成就させてしまったのである。トラウマを乗り越える鍵は、このような全知にして全能なる唯一の神に信頼を置くことに他ならない。
報道では、軍事作戦などが目立つ一方で、人々のトラウマに取り組む地味な働きがあることを覚えたい。これらの働きに従事する兄姉たちのために祈ろう。彼らの働きによって、一人でも多くのイスラエル人、パレスチナ人が、唯一にして真のシェルターである、「逃れの岩」なるキリストのうちに救いを見いだすことができるように祈っていただきたい。
■ イスラエルの宗教人口
ユダヤ教 75・4%
イスラム 16・7%
プロテスタント 0・4%
カトリック 1・0%
英国教会 0・02%
正教会 0・6%
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