2度の「原爆の日」や終戦記念日が続く8月に合わせ、日本キリスト教協議会(NCC)は11日、公式フェイスブックで「平和のメッセージ」を発表した。メッセージは、近年の世界情勢について「不信と敵意を深める空気に包まれている」と指摘。こうした状況に深い憂慮を覚えながらも、福音に励まされ平和のメッセージを発するとしている。
最近の国外の動きについては、2021年2月にミャンマーで発生した軍事クーデターや、昨年2月にロシアによる軍事侵攻が始まり、現在も停戦の見通しが立たないウクライナ戦争に言及。特にウクライナ戦争については、1990年代以降のポスト冷戦時代にあっても、人の目に見えにくい形で冷戦的思考が世界政治を支配し続けてきたと主張。「『安全保障』の名の下に敵意の心理が互いの不信感を一層強めて遂に戦争勃発となったのです」とした。
国内の動きについては、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などを明記した「安保関連3文書」が昨年末に閣議決定されて以降、今年の通常国会で軍拡路線を一層加速させる法案が強行採決されたと指摘。成立した防衛費大幅増の財源確保に向けた特別措置法や、防衛産業の生産基盤強化を目指す法律に抗議の意を示した。
昨年9月にドイツで開かれた世界教会協議会(WCC)の第11回総会では、NCCと加盟教団の参加者が、憲法9条の世界的意義を訴える書簡を送り、総会の声明文に盛り込まれたという。憲法9条の精神は「敵意ではなく和解と信頼による平和外交を指し示す」ものだとし、福音信仰に立ちつつ、その精神を高く掲げていくことを、日本のキリスト教会に託された宣教課題として示した。
今年9月で発生から100年となる関東大震災については、地震による混乱の中で多数の朝鮮人や中国人が虐殺された事件に言及。「100年前の虐殺事件の歴史から、平和を破壊する戦争における国家と社会、そして人間を支配する敵意と不信感と差別とが関連して取り返しのつかない暴力という結果を生むことを教訓として学ばねばなりません」と訴えた。
最後には、現在は「平和の脅かされる嵐の時代」だと表現。その中にあっても、「主が指し示されるいのちの向こう岸を見失うことなく、平和の宣教の航路を進み続けていけますように、敬愛する姉妹兄弟と共に心から祈りはたらく輪を広げていくことを訴えます」とした。