自殺ほう助の合法化に向けた議論が行われている英スコットランドで、現地のプロテスタント、カトリック、イスラム教の指導者が、合法化を目指す法案を否決するよう、スコットランド議会に求める共同声明を発表した。
声明に署名したのは、スコットランド国教会(長老派)議長のイアン・グリーンシェルズ牧師、スコットランド・カトリック司教協議会副会長のジョン・キーナン司教、スコットランド・モスク協会のイマーム(イスラム教の指導者)であるシャイフ・ハムザ・カンドワラ氏。3人はスコットランド議会で議員らと会合を持ち、自殺ほう助の合法化への反対意見を表明した。
会合は、英キリスト教系シンクタンク「ロゴス・スコットランド」が主催した。3人の指導者は、法案に対する「深い懸念」を表す共同声明に署名し、議員らに法案の否決を促した。声明は、自殺ほう助は人間の尊厳を損ない、弱い立場の人に人生を終える圧力をかけるとして、次のように主張している。
「私たちの信仰の伝統は、自殺ほう助それ自体が人間の尊厳を必然的に損なうという原則で一致しており、自殺ほう助を認めることは、私たちの社会全体が共通の人間性を失うことを意味します」
「スコットランド国教会、スコットランド・カトリック教会、スコットランド・モスク協会は、自殺ほう助と安楽死への反対を堅持します」
自殺ほう助の合法化を求める最近の動きは、英野党・自由民主党のリアム・マッカーサー議員(オークニー諸島選出)が主導している。法案は、判断力を有する末期症状の成人が、自身の人生を終えるための支援を要請することを認める内容になっている。
これに対して声明は、「他国における同様の法律の適用のされ方、そしてその導入が障がい者や高齢者など社会的に最も弱い立場にある人々に与える影響は、極めて有害です」と強調。議員らに対し、「本法案の意味を慎重に検討し、懸念を表明し、反対票を投じるよう」呼びかけている。
自殺ほう助の合法化について、キーナン司教は次のように述べた。
「自殺ほう助は人間の尊厳を攻撃するものであり、人間の命を、ますますその効率と有用性に基づいて評価する結果になります。自殺ほう助の合法化には、個人がその社会的および絶対的な価値を失う可能性があるという暗黙の了解があります」
「自殺ほう助や安楽死が合法である国では、弱い立場の人々が、重荷になることを恐れて命を絶つよう迫られていると感じているという証拠があります。このような状況では、自殺ほう助という選択肢が、死ぬ権利でなく、死ぬ義務の重圧と期待になってしまいます」
「高齢者や貧困層を含む弱者が、重荷と見なされることへの懸念を表明した場合、適切な対応は、彼らに死ぬ義務があると示唆することではなく、むしろ彼らのニーズを満たし、彼らが生きるために必要なケアと思いやりを提供することを約束することです」
また、グリーンシェルズ牧師は次のように述べた。
「私たちはキリスト教信仰に基づき、自殺ほう助の原則、実際の法律の適用、人の命の価値の認識、そして何らかの変化が、ケアの提供、特に緩和ケアに与えるであろう影響に対し、懸念を抱いています」