世界では3億6千万人ものクリスチャンが、高いレベルの迫害に直面せざるを得ない地域に住んでいるとし、世界福音同盟(WEA)は、11月6日と13日に開催される「迫害下にある教会のための国際祈祷日」(IDOP、英語)への参加を呼びかけている。
WEAに加盟する日本福音同盟(JEA)も公式サイトに日本語の資料を公開。「JEA加盟であってもなくても、ぜひ迫害を受けているクリスチャンと教会のために世界中でささげられる祈りの輪にお加わりください」と呼びかけている。
JEAが公開したIDOPの「祈りのガイド」(日本語)によると、世界で現在、迫害に直面せざるを得ない地域に住んでいるクリスチャンは3億6千万人に上る。これは、世界のクリスチャンの7人に1人に相当するという。
また、2021年にキリスト教信仰を理由に殺害されたクリスチャンは5千人を超える。国際人権協会によると、世界の宗教的迫害の8割がクリスチャンに対するものだという。
WEAのトーマス・シルマッハー総主事は、「迫害下にある兄弟姉妹は、多くの必要がありますが、最も緊急で、何よりも必要としているのは、祈りです」と強調。祈りによって、迫害下にあるクリスチャンを励ますとともに、「迫害下の兄弟姉妹を支えることを決意しましょう。彼らは、世界大の神の御国が進展する中にあって、迫害の最前線に置かれているからです」と呼びかけている。
IDOPは、クリスチャンに対する迫害の世界的な高まりを受け、WEAの信教の自由委員会が1996年に始めた。その後、世界の多くの教会やキリスト教団体が参加するようになり、現在は11月第1、第2日曜日と定められている。
今年は、インド、アルジェリア、スリランカ、アフガニスタンを特に集中的に祈る国として挙げ、「祈りのガイド」では、これら4カ国の迫害状況や祈祷課題を提示している。
「祈りのガイド」による4カ国の迫害状況と祈祷課題の概要は以下の通り。
<インド>
人口12億人のうち、クリスチャンは約2%。ヒンズー至上主義者が、強制的に改宗させているとして、教会や牧師を断罪し、日常的な差別・暴力行為を行っている。クリスチャンや教会に対する暴行・器物破損事件は、2017~21年は1年当たり平均350件に上る。また21年は、クリスチャンに対する暴行事件が前年比74%も増加した。11州で改宗を禁じる法律が制定されており、こうした法律が国際的な人権基準にのっとった形に改正されることなどが祈祷課題となっている。
<アルジェリア>
北アフリカに位置するアルジェリアは、人口4300万人のうち、約99%がスンニ派のイスラム教徒で、クリスチャンは13万5千人程度。イスラム教が国教だが、信教の自由は法律で認められている。しかし、教会は国から組織的な差別を受けており、18年以降、16のプロテスタント教会が強制的に閉鎖されるなどしている。閉鎖された教会の再開、権力者の教会に対する差別の停止などが祈祷課題となっている。
<スリランカ>
人口2100万人のうち、プロテスタントのクリスチャンは約1%で、70%がシンハラ仏教徒。憲法は、信教の自由を保障しているものの、仏教に特別な地位を与えている。09年の内戦終結後、クリスチャンの共同体に対する暴力事件が100件以上起きている。公的機関からの差別や脅迫、地域住民からのいじめや暴力などがあり、牧師や牧師家族が標的にされている。特に地方の牧師と牧師家族の守りなどが祈祷課題となっている。
<アフガニスタン>
人口の90%はスンニ派イスラム教徒、9%がシーア派イスラム教徒とされ、国内にいるクリスチャンは数千人と考えられている。アフガニスタンのイスラム法では、改宗は死罪となっており、21年にタリバンが政権を奪取して以降、多くのクリスチャンが国を離れ、またこれから離れようとしている。迫害のひどい国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(2022年版)によると、アフガニスタンはクリスチャンが生きるのに最も危険な国。より民主的な支配、人権の保障などが祈祷課題となっている。