世界のクリスチャン音楽界をリードするヒルソング教会と、開拓20年で3万人の教会へと成長したインドネシアのジャカルタ・プレイズ・コミュニティー・チャーチ(JPCC)のリーダーたちが講演する「ワーシップ&リーダーシップ・カンファレンス」が、11日から13日までの3日間、ライブチャーチ寸座(静岡県浜松市)で開催された。2日目午後には、ワーシップとリーダーシップに関する分科会が行われ、「リーダーシップの継承」に関する牧師限定の分科会では、オーストラリアにあるヒルソング教会のメインキャンパス「ヒルズキャンパス」を牧会するサム・ディマーロ牧師が講演。教会のリーダーシップを移行することがなぜ難しいのか、自身の経験を話しながら分かりやすく解説した。(関連記事:「立ちなさい、さあ行くのです」 ヒルソング教会とJPCCのリーダーらが講演)
ディマーロ氏は講演の冒頭で、2年間にわたるコロナ禍の影響に加え、ヒルソング教会の創設者であるブライアン・ヒューストン牧師が3月に突然辞任したことで「(この半年間は)とても難しい時期でした」と明かした。その上で、「しかし、希望にあふれる時期でもありました」と話した。
「今、私たちが希望にあふれている理由の一つは、私たちのビジョンが、1人の人よりも大きなものだからです」とディマーロ氏。「ボビー(夫人)とブライアンの素晴らしいところは、彼らが私たちの教会を、彼ら2人よりももっと大きなビジョンを持って建て上げてくれていたことです。私たちには大きなビジョンがあって、そこに向かって歩み続けることができます」と話した。
希望にあふれる2つ目の理由は、「私たちにはリーダーシップの厚い層があるから」。「2人がいなくなり、とても大変ですが、私たちにはたくさんの素晴らしいリーダーがいて、それぞれにステップアップしながら、皆が一緒に重荷を担っています」と話した。
3つ目の理由は、「私たちの教会には、誠実な人々がたくさんいるから」。ディマーロ氏は、「私たちの教会のヒーローは牧師たちではなく、教会に集う一人一人です。神様に対してこんなに飢え渇いている人々を導くことのできる特権を心から感謝しています」と話した。
さらにもう一つの理由は、「神様がまだ私たちと共にいてくださることを信じているから」。「イエス様は、『わたしがわたしの教会を建てる』と言われました。『あなたが教会を建てる』と言われたのではなく、『わたしが建てる』と言われました」と語り、今も多くの人々が救いに導かれ、多くの新しい人々が教会に来ていることを神に感謝した。
ディマーロ氏は、「ぜひ私たちのために祈ってほしい」と語り、「ヒルソング教会のために、そしてブライアンとボビーのために、教会をこれから導かなければいけないフィル・ドゥーリーとルシンダ(夫人)のために。そうしてくださると本当にうれしい」と話した。
その上でディマーロ氏は、教会のリーダーシップの移行がなぜ難しいのか、4つの理由を挙げて説明した。
1つ目の理由は、「自分のアイデンティティーと価値が、そのポジションにあるから」。「自分のアイデンティティーと価値が、そのポジションにあまりにも結び付いてしまっていて、それを手放すのが難しいという人を多く見てきました」とディマーロ氏。自身の経験を語りながら、「多くの人々が(ポジションを手放すことに)困難を覚えるのは、自分のアイデンティティーを、教会のどこに座っているかに求めているから」と指摘。「私たちが逃してはいけないのは、自分がイエス様と共に座っているという事実です。そこに自分のアイデンティティーを見いだす必要があります」と語った。
2つ目の理由は、「人は権力や特権にしがみつこうとするから」。ディマーロ氏は、「牧師やリーダーは人々から違った目で見られます。私たちは気を付けていないと、この権力や特権によって誘惑されてしまう」と指摘。「この権力や特権を失ったとき、自分はどのように他人の目に映るだろうかと疑問を持ち始めてしまいます。多くの人たちは、評判を気にするあまり、今のポジションを握り続け、それを手放すのを怖がります」と話した。
3つ目の理由は、「次のステップが不明確だから」。ディマーロ氏は、ある教会の牧師が、次の世代に働きを引き継ぐリーダーに対して、昔取り組んでいた働きをもう一度始めるように励ましているという実例を紹介。「神様の素晴らしいところは、いつも私たちのために次のステップを用意してくださっていることです」と話した。
4つ目の理由は、「計画が全くないから」。「変化というものは、全員に必ず訪れます」とディマーロ氏。「それは悪くないことなのです。ぜひ、どうやって前進したらいいか、どうやって計画を立てればいいのかを、今から考え始めてください」と勧めた。
モーセがしゅうとのイテロから、民の長たちを立てるよう助言を受ける箇所(出エジプト18:13〜)を引用し、「神様はモーセを力強い形で用いたのですが、これから神様がなさろうとしていることに対して、モーセは邪魔になり始めました」と状況を説明した。「私たちは次の世代のリーダーを育てることを、考え始めなければいけないのです」と強調し、「モーセは、自分しか民を助けることができないという自分に対する見方を捨てて、たくさんのリーダーを育てるリーダーとしての自分を見いだす必要がありました」と話した。
また、初代教会を導いた使徒たちが、教会内で起こった問題を解決するためにステパノら7人を選出することで、宣教の働きがますます前進した箇所(使徒6:1〜7)を引用。「リーダーシップの移行に関する大きな課題の一つは、私たちの周りに、今私たちがしている働きを、私たち以上に前進させることのできるリーダーがいるかということです」と語った。
「皆さんの上に、神様の御手は必ずあります」とディマーロ氏。「皆さんが今手にしているものや、皆さんが今携わっている働きを次に継承していくとき、それがさらに前進する形で移行できることを祈ります」と励ました。
参加者との質疑の中では、リーダーシップを移行するための備えについて、「チームのメンバーを集めて、5年後、10年後について語り合うことができるリーダーは、自己肯定感の強い、安定したリーダーだと思います。一番良い移行のできるリーダーは、そういうリーダー」だと話した。また、リーダーシップの継承に関する文献から学ぶことも勧めた。
ヒルソング教会の新しい国際主任牧師としてフィル・ドゥーリー牧師と妻のルシンダ牧師が選ばれた理由については、2人がヒルソング教会のDNAを持っていることや、南アフリカでの実績が高く評価されたこと、各国の指導的な牧師たちの多くが2人の就任を支持したことなどを挙げた。
最後にディマーロ氏は、「皆さんの上に、皆さんの教会の上に、神様の御手があることを信じていますし、皆さんもそう信じてほしい。日本で神様は素晴らしいことをしてくださいます」と力づけた。