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コヘレトと新約聖書

コヘレトと新約聖書(4)「三つよりの糸」―善きサマリア人の例え話にそれを見る― 臼田宣弘

2022年2月23日16時34分 コラムニスト : 臼田宣弘
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関連タグ:コヘレトの言葉(伝道者の書)ルカによる福音書臼田宣弘

倒れれば友が助け起こす

コヘレト書4章9~12節に以下の言葉があります。

9 ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。10 倒れれば、ひとりがその友を助け起こす。倒れても起こしてくれる友のない人は不幸だ。11 更に、ふたりで寝れば暖かいが、ひとりでどうして暖まれようか。12 ひとりが攻められれば、ふたりでこれに対する。三つよりの糸は切れにくい。

コヘレトが大切にしていることは3つあります。1つは「今この時に、永遠の神からのプレゼントである食べ物と飲み物を喜んで頂く」ことです。2つ目は「他者と共に生きる」ことであり、上記の箇所はこれに該当します。

善きサマリア人の例え話

ここから連想する新約聖書の箇所は、ルカ福音書10章25~37節の善きサマリア人の例え話です。

25 すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」 26 イエスが、「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、27 彼は答えた。「『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」 28 イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」 29 しかし、彼は自分を正当化しようとして、「では、わたしの隣人とはだれですか」と言った。30 イエスはお答えになった。「ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。31 ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。32 同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。33 ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、34 近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。35 そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』 36 さて、あなたはこの三人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」 37 律法の専門家は言った。「その人を助けた人です。」 そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい。」

「わたしの隣人とはだれですか」と問う律法の専門家に対して、イエスが、追いはぎに遭った人を助けたサマリア人を例えとして語られたものです。サマリア人の宗教は、主なる神を信仰しつつも他の神をも崇拝するシンクレティズム(宗教混淆〔こんこう〕)であったため、ユダヤ人は彼らを嫌い、交際していなかったのです。

隣人は誰か

この例え話で中心にされるのは、通常は追いはぎに襲われた人を助けたサマリア人です。しかしよく読んでみますと、この例え話は「隣人を自分のように愛しなさい」というイエスの言葉に対する律法の専門家の「では、わたしの隣人とはだれですか」という問いへの応答として語られたものです。そして、「だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか」というイエスの言葉に対して、「その人を助けた人です」という答えがなされ、「行って、あなたも同じようにしなさい」というイエスの言葉が返されています。

つまりこれは、隣人となったサマリア人を愛するようにとの教えでもあるのです。通常ならばサマリア人と交際しないユダヤ人は、サマリア人の介抱を受け入れないのかもしれません。しかし、この追いはぎに襲われたユダヤ人は、サマリア人の介抱を受け入れたのです。私にはここに、この例え話の要点があるように思えるのです。

もちろん、追いはぎに襲われたユダヤ人を助けたサマリア人の行為も大切だと思います。一人が助け、別の一人がその助けを受け入れるところが、この例え話の大切なところです。相互に隣人となり合っているのです。私はそこに、コヘレト書の「ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。倒れれば、ひとりがその友を助け起こす」という言葉を重ね合わせるのです。

三つよりの糸

しかしコヘレトは続けて、「ひとりが攻められれば、ふたりでこれに対する。三つよりの糸は切れにくい」と述べています。2人の間にもう1人が入ることで、三つよりの糸になるというのです。私はこの3本目の糸となる存在が、まさにイエス・キリストだと思うのです。

エフェソ書2章15~16節に、「こうしてキリストは、双方を御自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架を通して、両者を一つの体として神と和解させ、十字架によって敵意を滅ぼされました」という言葉があります。敵対する者同士の間にキリストが入り、両者を和解させるというものです。

善きサマリア人の例え話では、追いはぎに襲われたユダヤ人と、それを助けたサマリア人という、本来は交際しない人同士の間にキリストが入ることで、隣人関係が成り立っていると思うのです。それが「三つよりの糸」なのではないかと、私は考えています。(続く)

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◇

臼田宣弘

臼田宣弘

(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:コヘレトの言葉(伝道者の書)ルカによる福音書臼田宣弘
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