欧州連合(EU)は、包摂性を理由にスタッフが「クリスマス」の代わりに「ホリデー(休暇)」と言うことを推奨するガイドラインを発表したものの、批判を受けたことで撤回に追い込まれた。
この「包摂的なコミュニケーション」に関するガイドラインは「平等を促進する」ために作成された。しかし、バチカンやイタリアの政治家からの苦情が相次いだことで、EUの政策執行機関である欧州委員会(EC)は11月30日、撤回を発表した。
ガイドラインでは、クリスマスにまつわる言葉や「キリスト教関連の名称」の使用は「不寛容や批判」を示唆したり、「偏見を助長したり、特定の宗教的集団を選別したりする」可能性があるとして、変更するよう奨励していた。
「すべての人がキリスト教の祝日を祝うわけではありませんし、すべてのキリスト教徒が同じ日に祝うわけでもありません」とガイドラインには書かれていた。
イタリアのアントニオ・タヤーニ前欧州議会議長も、このガイドラインに不満を表明。ツイッターで、「包摂性(という言葉)は(EU)のキリスト教的ルーツを否定することを意味しない」と述べていた。
ガイドラインは、ヘレナ・ダリ平等担当欧州委員が10月末に発表していた。
英タイムズ紙(英語)によると、ガイドラインの要注意用語には「Mr、Mrs、Ms」などの敬称も含まれ、特に要求された場合にのみ使用すべきとし、「そのような情報がない場合には、『Mx』を使用すべき」としていた。またガイドラインには、次のように書かれていた。
「どの人称代名詞が『お好み』ですかと相手に尋ねてはいけません。これは、性自認が個人的な好みの問題だと仮定することになりますが、それは誤りです。『あなたの人称代名詞は何ですか』と、その人が自分自身をどう表現しているか尋ねてください」
撤回を発表したダリ氏は、ガイドラインにはさらなる作業が必要だと述べた。
「欧州委員会のスタッフが職務上のコミュニケーションを図るための内部文書としてガイドラインを作成するという私の取り組みは、ある重要な目的を達成するためのものでした。(その目的とは)欧州文化の多様性を分かりやすく説明し、欧州市民のあらゆる人生の歩みや信念に対する欧州委員会の包摂的な性質を紹介するというものです」
「しかし、今回発表されたガイドラインはこの目的を十分に果たすものではありません。ガイドラインは成熟した文書ではなく、欧州委員会の規格基準をすべて満たしているわけではありません。明らかにガイドラインにはさらなる作業が必要です。したがって私はガイドラインを撤回し、この文書についてさらに検討します」
イタリアのマッテオ・レンツィ元首相はこの方針転換を歓迎し、ツイッターで「これは不条理で間違った文書だ。共同体が自身のルーツを恐れることはない。文化的アイデンティティーというものは価値観であって、脅威ではない」と述べた。