今年6月、驚くべき調査結果が報道された。それは、2020年の出生数と合計特殊出生率に関するものである。NHKの報道によると、2020年の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標)は1・34となり、5年連続で前年を下回る減少傾向にあるという。さらに昨年1年間に生まれた子どもの数(出生数)は約84万人で、1899年から統計を取り始めて以降最も少なくなったというのである。
昨年7月に内閣府が出した「令和元年度少子化の状況及び少子化への対処施策の概況(令和2年版少子化社会対策白書)」によると、2019年の出生数は86万5234人、合計特殊出生率は1・36となっている。この時も「過去最低」と評されていたが、さらに1年経ることで、出生数も合計特殊出生率ももっと低い数値となってしまっている。
つまり、端的に言って子どもの数が減っているのである。これはすなわち「若者の減少傾向」にさらに拍車がかかったことを意味し、日本の「超高齢化社会」が未知の領域へ突入していることを意味する。その影響は計り知れないものがある。そして社会の中に存在する「キリスト教会」もまた、これから逃れる術はない。
戦後から現在まで、常に信者人口が1パーセント未満という状況は変わらない。これは何を意味するのか。ただでさえ「教会に子どもがいない」状況であるのに、さらに子どもの数が減っていくということを示唆するものである。こうした状況を前に、牧師や教会リーダーたちは危機感を覚える。いや、正確には「危機感を募らせてきた」。そして「何とかしなければ」と皆でつぶやき合うことはしてきた。だが、決め手となる一手に踏み込むことはなかった。踏み込めなかったのかもしれない。
しかし、時代は待ってくれない。私が子どもの頃、愛知県の片田舎であっても子どもクリスマス会などをするなら、常に50~100人近い子どもたちが教会にやって来ていた。もちろん毎週通ってくる子は少なかったが、それでも30~50人規模の教会には、常に10人前後の小学生が集っていた。それが今では、日曜学校を開校できない教会まで存在する。子どもがいないのだ。信者の家庭に子どもがかろうじていたとしても、その子たちが教会にやって来ない。もしくは中高生になると来なくなってしまう。
「このままではいけない」。そう叫ぶ声は聞こえてくる。皆願っていることははっきりしている。教会に若者が来てほしいし、若者たちによる「むせ返るような活気」を取り戻したいと切に願っているのだ。しかし、最も大切なピースが欠けている。それは「HOW(いかにして)」というピースである。このことに葛藤を覚えているクリスチャンはまだ希望がある。しかし、いつしか「若い人の伝道は、若い人で」と、体よく身を引く口実を口にする人が増えてきている。だが彼らを責めることは酷だ。なぜなら、今まで一生懸命に日曜学校の指導案を作成したり、子どもたちのためにいろいろな方策を練ったりしてきた人たちがほとんどだからである。「やれることはやり切った」ということでもあろう。
「だが」「とはいえ」「それでも」・・・。私の中にこうした接続詞が去来する。何か手はないのか。どこかに突破口はないのか。今あるもの、すでに持っているものの中に、若者たちが教会に足を向けるきっかけとなるようなものは存在しないのか。そう考え続けて、私もいつしか50歳を越えてしまった。そして一つの活路を見いだした。それが今回分かち合いたい内容である。イントロが長くなってしまったが、少子化時代における教会の「次世代」のために、これから幾つかの本を紹介したい。かといって、それは諸外国で成功している若者伝道のノウハウ本ではない。はたまた、高名な牧師や新進気鋭の若手牧師・伝道師だからこそ実践できるようなレアなケーススタディー集でもない。もっと地に足を着けて、人一倍実直で信仰熱心ではあるけれど、すでに若者たちに向き合うには年齢的にかなり年を取ってしまった、と自分で「勝手に思い込んでいる」市井のクリスチャンたちにこそ実践可能な視点を提供するものである。それは「教育」という分野に関する「一般書」である。
- 石川一郎著『いま知らないと後悔する2024年の大学入試改革』(青春出版社)
- 佐藤郁哉著『大学改革の迷走』(筑摩書房)
- 森博嗣著『勉強の価値』(幻冬舎)
- 齋藤孝著『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』(誠文堂新光社)
- 朝比奈なを著『ルポ 教育困難校』(朝日新聞出版)
いかがであろうか。「こんな本で教会が変わるの?」と思われる人もおられるだろう。確かに「聖書のみ」「信仰のみ」と、威勢よく「キリスト教的観点」から近視眼的に若者を見ることしかできないなら、そう思われるのも仕方ない。しかし次回から詳述するが、「教育」という分野は、クリスチャンホームの子どもであろうと未信者の子どもであろうと関係なく、彼らにとって(そして親にとっても)決して看過し得ない重大なトピックスなのである。すべての子どもたちの将来に、希望の光をともす働きを教会が担えるなら、そこに新たな伝道の機会も訪れるはずである。(続く)
■ 少子化時代における教会の「次世代」のために:(1)(2)(3)(4)
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