シンガポールのキリスト教会や他の宗教団体、地域の団体が、政府やソーシャルメディアなどを運営するハイテク企業各社と協力し、インターネット上の過激主義に対抗する方策を模索する活動を始めた。
カトリック系のUCAN通信(英語)によると、シンガポールの文化・地域・青年省が3日、インターネット上の教化(洗脳)や過激主義が懸念される中、この取り組みを発足させた。フェイスブックやグーグル、ツイッター、ティックトックなどが協力し、6月から8月にかけてワークショップを3回開催。教会やその他の団体がオンライン上の存在感を強化し、過激なコンテンツに対応する方策を支援する。また、デリケートな宗教問題や人種問題の扱い方にも触れるという。
活動は、コロナ禍によりさらに懸念されるインターネット上の人種や宗教に関する過激なコンテンツから若者を守り、参加団体に必要な情報を提供することを目的としている。
世界的な宗教迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(英語)の東南アジア地域マネージャーを務めるジーナ・ゴー氏は、クリスチャンポストの取材に応じ、この取り組みを称賛して次のように語った。
「新型コロナウイルスの感染拡大により、インターネットの利用は増加しています。残念なことに、過激派はインターネット利用者の心の中に入り込んでしまいます。このまま放置すれば、人々は過激化し、宗教施設や信仰を持つ人々に対して行動を起こすようになるでしょう。シンガポール政府が必要な措置を講じ、インターネット上のテロや過激主義を排除することの重要性を地域社会に啓蒙しているのは素晴らしいことです」
この取り組みは、シンガポールで発生した複数の事件がその発足を後押しする形になった。
今年1月には、2019年3月にニュージーランドのクライストチャーチで発生したモスク銃乱射事件の記念日に、イスラム教徒を殺害する目的で2つのモスクに対する襲撃を企てたとして、キリスト教徒の16歳の青年が逮捕された。当時の報道(英語)によると、この青年は国内安全法に基づいて逮捕された。
この青年は、51人を殺害したクライストチャーチのモスク銃乱射事件の犯人であるブレントン・タラン被告(オーストラリア国籍)の過激思想に影響を受けていたという。
若者向けの異宗教間プラットフォーム「平和のためのバラ」のアンバサダーを務めるアッバス・アリ・モハメド・アナス氏も、この取り組みは正しい方向への一歩だと考えている。
シンガポールのストレイツ・タイムズ紙(英語)によると、アナス氏は「今日のデジタル空間をナビゲートする適切なガイダンスや情報がないなら、若者たちはオンライン上で過激化したり、ヘイトスピーチをしたりする危険性に直面します」と語った。「平和と愛と調和のメッセージを通じて責任ある対話を勧めることで、私たちはこの憂慮すべき事態に対抗する必要があるのです」
文化・地域・青少年省のアルビン・タン大臣は、コロナ禍でインターネットを利用する人が増えたことで、ソーシャルメディア上に分裂をもたらすコンテンツが掲載されるリスクが高まっており、「憂慮すべき事態」だとし、対策を講じる必要があると話す。
「ソーシャルメディアには分裂させる力がある一方で、団結させる力もあります。私たちのテクノロジー協力団体は、オンライン空間にポジティブな影響を与え、地域の共通基盤を育成するために協力しています」
この取り組みには、カトリック教会のシンガポール大司教区や、シンガポールのエキュメニカル組織であるシンガポール教会協議会(NCCS)、シンガポール・イスラム宗教評議会、道教連盟、ヒンズー基金委員会などが参加している。
フェイスブックのシンガポール・ASEAN地域の公共政策責任者を務めるクララ・コー氏は、この取り組みの発表式で、「憎しみや不寛容、過激主義は、私たちがフェイスブックに求めているものではありません。そういったものの居場所はありません」と述べた。
「肯定的な発言が破壊的な発言に対する防波堤になると私たちは信じています。だからこそ私たちは、地域の団体が行動を起こす呼び掛けを広めてオンライン空間に効果的に橋を架ける支援をしているのです」