今回はエフェソ書1章11~14節を読みます。神を頌(たた)えることを意味する「頌栄」の色合いが特に強い箇所で、「神の栄光をたたえる」という言葉が繰り返されています。
11 キリストにおいてわたしたちは、御心のままにすべてのことを行われる方の御計画によって前もって定められ、約束されたものの相続者とされました。12 それは、以前からキリストに希望を置いていたわたしたちが、神の栄光をたたえるためです。13 あなたがたもまた、キリストにおいて、真理の言葉、救いをもたらす福音を聞き、そして信じて、約束された聖霊で証印を押されたのです。 14 この聖霊は、わたしたちが御国を受け継ぐための保証であり、こうして、わたしたちは贖(あがな)われて神のものとなり、神の栄光をたたえることになるのです。
前回お伝えしました10節の最後に、「天にあるものも地にあるものもキリストのもとに一つにまとめられるのです」とありました。キリストが宇宙の支配者であることが述べられているのです。これは、コロサイ書1章19~20節の「神は、御心のままに、満ちあふれるものを余すところなく御子の内に宿らせ、その十字架の血によって平和を打ち立て、地にあるものであれ、天にあるものであれ、万物をただ御子によって、御自分と和解させられました」を踏襲し、「キリストのもとに一つにまとめられる」ということをより強調しているように思えます。
11節冒頭の「キリストにおいてわたしたちは」と、13節冒頭の「あなたがたもまた、キリストにおいて」は、それを受けていると思われます(どちらも「エン ホー / ἐν ᾧ」という言葉が使われています)。キリストのもとに一つにまとめられた者の在り方が述べられています。ただ、11節は「わたしたち」で、13節が「あなたがた」なのは、前者は福音を宣(の)べ伝えた側であるユダヤ人を指し、後者は福音を伝えられた側であるギリシャ人を指しているとされています(石田学著『エフェソ書を読む』45ページ参照)。片方ではなく両方が記されているのは、ユダヤ人もギリシャ人も区別なく、「約束」(11節、13節)の下にあったのであり、どちらも区別なく「神の栄光をたたえる」ためなのであろうと思います。
11節と12節は原文ではひと続きです。「キリストにおいて」で始まり、「キリストに希望を置いていた」で終わる文章になっています。この箇所は、「わたしたちは」としてユダヤ人のことが記されているとされていますが、「キリストにおいて」で始まり「キリストに希望を置いていた」で終わっていますので、旧約時代のイスラエルの選びのことではなく、キリストが到来した新約時代のことを述べているのだと思います。そのことを前提として、「わたしたちが、神の栄光をたたえるためです」という言葉に導かれます。
13節で、再び「キリストにおいて(エン ホー/ ἐν ᾧ)」が登場しますが、今度はギリシャ人を対象とする「あなたがた」に対しての奨めとなります。「あなたがたもまた、真理の言葉、救いをもたらす福音を聞き」とありますが、これはコロサイ書1章5節の「それは、あなたがたのために天に蓄えられている希望に基づくものであり、あなたがたは既にこの希望を、福音という真理の言葉を通して聞きました」に基づいているのでしょう。エフェソ書ではそれがさらに、「そして信じて、約束された聖霊で証印を押されたのです」と続けられています。
そして14節では、「あなたがた」から再び「わたしたち」になります。しかしこれは「ユダヤ人」に戻るのではなく、「ユダヤ人もギリシャ人も」という意味での「わたしたち」でありましょう。そして、その意味での「わたしたち」において、「この聖霊は、わたしたちが御国を受け継ぐための保証であり、こうして、わたしたちは贖われて神のものとなり、神の栄光をたたえることになるのです」と記されているのです。「ユダヤ人もギリシャ人も」という両者において、お互いが共に神の栄光をたたえることへと導かれているのです。
エフェソ書1章3~12節は、全体が頌栄の言葉となっていますが、それがこの書簡の特徴です。パウロの時代よりも少し時を経て、教会においてこのような頌栄の言葉が定着してきていたからだともいわれています。礼拝において、このような言葉が繰り返し用いられていたのかもしれません。
そして今回見てまいりましたように、その中でも11~14節は特に、頌栄という意味合いが強いものとなっています。またその前提として、「ユダヤ人もギリシャ人も」ということが示されています。エフェソの教会には当時、ユダヤ人とギリシャ人が混在していたのでこのように記されているのでありましょうが、今日においても教会は、民族・性別・年齢・職業などを超えて、共に神の栄光をたたえて礼拝をささげる場所なのです。(続く)
※ フェイスブック・グループ【「パウロとフィレモンとオネシモ」を読む】を作成しました。フェイスブックをご利用の方は、ぜひご参加ください。
◇