カトリック広島教区の40代の女性信者が、イエズス会所属の外国人神父からパワーハラスメントを受けたと訴え、イエズス会日本管区が調査委員会に当たる「ハラスメント防止対策委員会」を設置し、調査を行っていることが分かった。女性は適応障害と診断され、現在もフラッシュバックがあると訴えている。一方、日本管区によると、神父はパワハラを否定している。
女性の訴えは、2017年2月から3月にかけての約1カ月間、神父の母国一時帰国に同行した際、同じく同行した当時未信者だった別の女性の世話をするよう神父から強要されたというもの。拒否すると何度も強い口調で非難されたり、冷淡に扱われたりしたという。女性にはツアー旅行の添乗員として長いキャリアがあり、神父はそれを理由に要求してきたという。女性はまた、当時未信者だった女性からも、世話を断ると人格を否定するような言葉を浴びせられたとしている。現地滞在中に不眠症となり、帰国後には適応障害と診断された。現在も就労が困難な状況にあるという。
一方、日本管区によると、神父はパワハラを否定した上で、女性が帰国してからしばらくして神父の親族らが来日した際、自宅に招待して食事を提供したことがあったと説明。女性が帰国後、必ずしもすぐに精神的に落ち込んだようには見えない状況があると話している。しかし女性は本紙に対し、神父の親族らを自宅に招待したのは、神父の母国訪問時に世話になったことのお礼にすぎないなどと説明している。
日本管区は2019年10月から昨年3月にかけ、女性と神父の両者に複数回にわたる聞き取りを実施。女性に対しては昨年10月、東京教区の「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」で委員を務めるシスターに依頼しての追加の聞き取りも行った。これらの事前調査を踏まえ、3月24日には第1回となるハラスメント防止対策委員会を開催。委員会は日本管区長補佐を含めた男女各2人の4人構成で、神学・心理学が専門の上智大学教授や法曹有資格者のカウンセラーも参加している。カウンセラーは女性で、キリスト者ではない立場で参加している。
日本管区によると、第1回の委員会ではまず、事実確認を行った上で情報に不足がないかを検討した。その上で、女性の訴えがパワハラであることから、神父と信者の間に職場の上下関係を当てはめてもよいかなどの議論を行った。また神父が外国人であり、対応の仕方に不慣れな点が見受けられることから、日本語や日本文化への理解度による影響についても検討が必要だと考えているという。
なお、神父は現在、広島教区が管轄する教会の主任司祭を務めているが、同教区によると、修道会所属の神父の対応は修道会によるという。