菅義偉首相は4日、記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都と埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県を対象に緊急事態宣言の発令を検討すると表明した。会見では、1日に3千人を超える国内の感染者のうち、1都3県が半数以上を占めていると指摘。一方、これまで行ってきた感染症対策の経験により、飲食による感染リスクが高いことが分かっているとし、昨年春の発令時とは異なり、飲食による感染リスク軽減を主眼とした限定的、集中的な措置としたいとする考えを示した。
首都圏1都3県に「強いメッセージが必要」
菅氏は、北海道や大阪府など、営業時間の短縮や休業を要請している自治体では、感染者数の増加が抑えられている一方、要請が行われていない首都圏の1都3県などでは、感染者数が増加していると強調。こうした状況に対する「強いメッセージが必要」だとし、これまで慎重な姿勢を示していた緊急事態宣言の検討に入ることを決めたと説明した。
宣言の期間について明言は避けたものの、NHKなどの報道によると、専門家らによる諮問委員会に意見を聞いた上で、今週中の早い時期に1都3県を対象に宣言を発令し、期間は1カ月程度とする方向で調整が進められているという。
1都3県の知事はこれに先立ち2日、政府に対して宣言の発令を要請しており、NHKによると、今月8日から今月末まで「緊急事態行動」を呼び掛ける方針で調整を行っているという。緊急事態行動では、住民に対し午後8時以降の不要不急の外出自粛を要請。酒を提供する飲食店に対しては午後8時までの営業時間短縮を求め、事業者に対してはテレワークの徹底を要請するなどする。さらに、緊急事態宣言が8日よりも前に発令された場合は、前倒しして実施することも検討するという。
昨年の緊急事態宣言発令時に教会は
緊急事態宣言は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて昨年3月に一部改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいて発令される。発令されると、対象となる都道府県の知事が住民に対し外出自粛を要請したり、学校や百貨店など人が多く集まる施設に対し、使用の制限や停止などの要請や指示を行ったりできるようになる。昨年4月から5月上旬にかけての宣言発令時には、教会や神社などの宗教施設は、「生活必需サービスを提供する店舗等」に分類されるなどし、休業の対象外とされた(関連記事:緊急事態宣言の休業要請、教会は7都府県で「対象外」)。
国内のキリスト教会はこの期間、感染症対策を行いつつ対面での礼拝を継続する教会もあれば、対面とオンラインの礼拝を平行して行う教会や、オンラインのみの礼拝に移行する教会、礼拝を自粛する教会もあり、地域や教会の状況に応じてさまざまな対応を取った。また、宣言発令に先駆けて公開ミサを原則中止としていたカトリック東京大司教区は、宣言解除後も約1カ月間にわたり同様の対応を維持するなど、慎重な対応を取った。
一方、キリスト教書店は臨時休業や営業時間を短縮する店舗が相次ぎ、東京のお茶の水クリスチャン・センターや大阪クリスチャンセンターなどは、宣言期間中、ビル閉鎖や全館休館の措置を取った。
カトリック教会は「感染症対応ガイドライン」を昨年発表
4日の記者会見を受け、ホームページなどに緊急事態宣言が発令された場合の対応などを公表している教団はこれまでのところ確認できないが、日本カトリック司教協議会は昨年11月、未知のウイルスなどによる感染症に備え、「日本のカトリック教会における感染症対応ガイドライン」を発表している。
同ガイドラインでは、感染症の流行を6段階に分けており、緊急事態宣言・自粛要請下は「国内における感染症の感染拡大」に分類。すべての信徒に対しミサの出席義務を免除し、行えるのは会衆が参加しないミサのみとし、原則としてそれ以外の教会活動はすべて中止するとしている。また秘跡は、病者の塗油のみ緊急性がある場合に限り十分な感染症対策を取って行うとし、洗礼や結婚、ゆるしは延期するとしている(関連記事:「日本のカトリック教会における感染症対応ガイドライン」発表 未知の感染症に備え)。
コロナ対策の4つの柱
菅氏は4日の記者会見では、1都3県を対象とした緊急事態宣言の検討を含む「感染対策」のほか、「水際対策」「医療体制」「ワクチンの早期接種」の4点を新型コロナウイルス対策の柱として説明した。
水際対策については、昨年末に帰国者から新型コロナウイルスの変異種が発見されたことから、外国人の新規入国を原則禁止にするなど、入国規制を強化。中国、韓国、シンガポール、ベトナムの4カ国を対象にビジネス関係の往来を認めている「ビジネストラック」についても、相手国で変異種が発見された場合は即時停止にするとした。
医療体制については、医療スタッフ確保のための財政支援を行い、各自治体と一体となって病床確保を進めるとし、必要であれば自衛隊の医療チームの派遣も行うと表明。「医療崩壊を絶対に防ぎ、必要な人に必要な医療を提供する」とした。
ワクチンの早期接種については、米製薬会社に強く要請を行ったことで、当初は2月中とされた治験データの取りまとめを1月中に前倒しできる予定だと説明。その後、安全性や有効性の審査を行い、2月下旬までに接種を開始できるよう準備を進め、医療従事者や高齢者、高齢者施設の従業員らから順次接種を開始したいと述べた。
その上で国民に対しては、新型コロナウイルスは従来のものも変異種も対策は同じだとし、マスクの着用と手洗い、3密の回避を要請。「共にこの危機を乗り越えていきたい」と協力を求めた。