英国国教会で新たに発表されたセクシャリティーなどに関する資料「愛と信仰に生きる」(Living in Love & Faith=LLF、英語)をめぐって激しい論争が起きていることを受け、同教会の主教2人が、個人攻撃を非難するとともに、論争相手に対して「雅量と優しさと思いやり」を示すよう求める声明(英語)を発表した。
声明を発表したのは、コベントリー教区のクリストファー・コックスワース主教とロンドン教区のサラ・マラリー主教。コックズワース主教はLLFの調整グループの議長を、マラリー主教はLLFの「次のステップ・グループ」の議長をそれぞれ務めている。
「LLFの一環として、勇気をもって自身のセクシャリティーを明かした一部の人々に対し、具体性と有害性を伴う攻撃をすることは誤りであって、LLFの精神にも、主教会が推奨する牧会原則(英語)の精神にも基づいていません。個人に対する侮辱や攻撃は、私たちの誰もが召されている尊敬と愛、雅量と優しさ、思いやりに反しています」
両主教による声明が出されたのは、LLFが発表された2週間後のことだった。LLFは、性や結婚、性的指向といった問題が教会に深い分裂をもたらす中、英国国教会が進むべき道を模索することを目的に用意された文章と映像による一連の資料だ。
LLFの公開後、英国国教会内のリベラル派は、こうしたトピックスについて伝統的な見解を支持してきた同教会内の福音派に対してインターネット上で厳しい批判を展開。特に英国国教会福音主義評議会(CEEC)が制作した動画「美しき物語」(原題:The Beautiful Story、英語)をめぐって猛烈な批判をしている。また批判の矛先は、これらのトピックスについて英国国教会の歴史的な立場を表明している、あるいはそうした立場の人々と交流を持っているだけの主教やその他の要職者にも及んでいる。
一方、英福音派アドボカシー団体「クリスチャンコンサーン」が制作した動画(英語)をめぐっては、リベラル派だけでなく、一部の福音派からも懸念の声が上がっている。動画はLLFからの短い抜粋を幾つか引用した上で、言われている内容に関して批評しているもので、動画の抜粋が選択的に使用されていると批判されている。批判者は、それらが文脈から外れた形で引用されており、引用された特定の個人に対する不正に当たるとし、またLLFの内容全体を表しているものでもないとしている。
コックスワース主教とマラリー主教による声明が出されたのも、この動画による影響があるとみられており、両主教は声明で次のように述べている。
「私たちは、『愛と信仰に生きる』のために自身の体験を公表する道を選んでくれた一人一人に深く感謝しています。彼らは私たちの学びを豊かなものとしているだけでなく、今日の英国国教会に見られる多様性を認識するよう勧めてくれています。彼らは開かれた心をもって受け入れられるべきです」
「LLFの資料に関わることは豊かさをもたらします。そして、さまざまな人に対してさまざまな点で問題を投げ掛けてくれます。アイデンティティーの問題、セクシャリティーの問題、人間関係や夫婦の問題は極めて個人的なものであり、実生活に具体的な影響をもたらします。現在行われている対話や学習と識別のプロセスが、可能な限り安全な方法で行われることが大切です」
その上で両主教は最後に次のように述べている。
「私たちのさまざまな実体験や神学的理解と共に学ぶLLFのプロセスは簡単なものではなく、尊敬の念と愛、雅量と優しさ、思い遣りがなければうまくいくものではありせん」