英国の一部の学校が、キリスト教徒ではない他の宗教の生徒たちに配慮し、宗教教育の授業で「BC」や「AD」という歴史的に用いられてきた暦の用語を削除しているという。行き過ぎたポリティカル・コレクトネス(偏見や差別を含まない中立的な用語)だと批判する者もおり、他宗教者の中からは「誰も気にしない」という声も出ている。
英デイリー・メール紙(英語)は1日、英国内の学校で「BC」「AD」という表記が消えつつあることを伝えた。英南東部イースト・サセックスにある学校のシラバスには、「キリスト教徒ではない人たちを配慮し、現在はBCEとCEが使用されています」と書かれているという。
西暦の紀元前を意味する「BC」(Before Christ=キリスト以前)と、紀元を意味する「AD」(Anno Domini=主[イエス・キリスト]の年、ラテン語)が、それぞれ「BCE」(Before Common Era=共通紀元前)と「CE」(Common Era=共通紀元)に置き換えられているのだ。
英国の右派団体「本当の教育運動」のクリス・マクガバン議長は、こうした動きは「ポリティカル・コレクトネスへの降伏だ」などと述べ、強く非難している。
一方、英国ムスリム評議会副事務総長でイマム(イスラム教の指導者)のイブラヒム・モグラ氏は、「(BCとADの表記が)イスラム教徒の感情を害するとは思いません」とコメント。英国ユダヤ人代表者会議の広報担当も、「普通の学校でBCとADが使用されていても、誰も気にしないと思います」と話している。
英国国教会の元カンタベリー大主教であるジョージ・ケアリー氏は同紙に、伝統的用語の削除は「非常に残念なこと」と語った。
こうした批判に対し、英国の宗教教育常設諮問協議会全国協会(NASACRE)のポール・スマーリー議長は、「個々の宗教教育常設諮問協議会(SACRE)と学校は、どんな形の暦が適当であるかに関して判断することができます」と話している。
これとは別に、英国では先月、宗教教育教師全国協会が、国内の中学校の4分の1以上が宗教教育を提供しておらず、違法状態にあるとする報告を発表し、英国の公共放送であるBBC(英語)などが伝えていた。