45人の死者を出したエジプト北部の教会連続爆破テロ事件では、教会を警備していた警察官3人も犠牲になった。その1人、ナグワ・アブデル・アリームさん(55)は、同国の女性警察官で最初の殉職者だったという。エジプトのメディアによると、アリームさんの2人の息子のうち1人も警察官で、この事件で同じく犠牲になった。
事件は、キリスト教の祭日であるパームサンデー(聖枝祭)の9日に発生。エジプト北部の都市タンタの聖ジョージ教会と、アレクサンドリアにある聖マルコ大聖堂で大きな爆発があり、計45人が死亡、約130人が負傷した。いずれも同国のキリスト教では主流派のコプト正教会の教会で、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。
聖ジョージ教会では、犯人が教会内にまで侵入して自爆したが、聖マルコ大聖堂では、警察官に止められ、犯人は入り口付近で自爆した。教会に入ろうとした犯人を食い止めたのが、アリームさんらだった。聖マルコ大聖堂での爆発は、コプト正教会のトップであるコプト教皇タワドロス2世を標的にしたものとみられており、教皇は爆発の少し前に現場を去っていたため、無事だった。
英インディペンデント紙(英語)によると、アリームさんの夫は軍人で、SNS上では感謝や祈りの言葉と共に2人が写った写真が広く共有されたという。アリームさんは、イスラム教徒の女性が頭にかぶるヒジャブを着用しており、ある人はツイッターに「ヒジャブをかぶったイスラム教徒の警察官が、アレクサンドリアのコプト正教会を守るために命を落とした。何を着ているかで人を判断しないで。行いが重要」とコメントした。
エジプトは、人口9300万人のうち80パーセント以上がイスラム教徒で、残りはキリスト教徒、特にコプト正教徒がその大部分を占めている。キリスト教徒は同国では少数派となり、たびたび国内のイスラム過激派組織の標的にされている。
今回の事件に対し犯行声明を出したISは、さらなる攻撃を警告。声明では「十字軍、また背教者の同盟国とわれわれの間にある『つけ』は、とてつもなく大きい。神のおぼしめしがあれば、その『つけ』は、彼らの子どもたちから流される血によって支払われることになろう」と述べている。ISは以前から、エジプトのキリスト教徒を一掃すると明言する動画を公開している。