山浦玄嗣の翻訳(ケセン語訳聖書)
このようにして、イスラエルで書かれ、ヘブル語やギリシャ語で書かれた聖書が、私たちの国日本に日本語で届けられるようになったのです。感謝ですね。これで私たちは、自分の言葉で神様の手紙を読むことができるようになったのです。でも、今このコラムを読んでくださっている方は、たぶん日本のあちこちに住んでいると思います。大阪の人は大阪の言葉を、名古屋の人は名古屋弁を使います。東北では東北の言葉、九州の鹿児島では鹿児島弁を、また沖縄の人はまた違った沖縄の言葉を使って生活しています。そういう人たちは、いわゆる標準語では本当に言いたいことが言えないもどかしさを感じているかもしれません。ですから、聖書が自分の地域で話される言葉になったらどんなに良いだろうと思うでしょう。
実は、岩手県の気仙地方の山浦玄嗣(はるつぐ)という方が、それと同じことを考えました。そして、何十年もかけて、ギリシャ語やヘブル語も勉強し、とうとう気仙地方の言葉(ケセン語)に新約聖書を翻訳しました。そしてこの聖書はその地域の人たちにとても喜んで受け入れられています。やがて皆さんの地方の言葉にも聖書を翻訳しようと思う人が出てくるかもしれません。ひょっとして、皆さんの中に将来そのようなことをしようと考える人が出てきたら、私はとてもうれしいです。私の知っている中には、大阪弁で書かれた聖書もあります。英語でも、聖書は幾つかの方言に翻訳されています。
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浜島敏(はまじま・びん)
1937年、愛知県に生まれる。明治学院大学、同大学院修了。1968年4月、四国学院大学赴任。2004年3月同大学定年退職。現在、四国学院大学名誉教授。専攻は英語学、聖書翻訳研究。1974、5年には、英国内外聖書協会、大英図書館など、1995、6年にはロンドン大学、ヘブライ大学などにおいて資料収集と研究。2006年、日本聖書協会より、聖書事業功労者受賞。2014年7~9月、ロンドン日本語教会短期奉仕。神学博士。なお、聖書収集家として(現在約800点所蔵)、過去数回にわたり聖書展示会を行う。国際ギデオン協会会員。日本景教研究会会員。聖書の歴史、聖書翻訳に関する著書・翻訳書、論文多数。