西安周至県の景教碑
古都西安は古代の香りを醸し出す都市で、ホテルからの西安城の眺めは壮大でありました。日本人が城と聞いてイメージするのは、城郭と櫓(やぐら)と天守閣かと思いますが、中国の城は幅の広い囲いだけで、万里の長城と同じです。その囲いの上で毎朝多くの人々が太極拳をし呼吸を整えて一日を始めるそうで、トラックが2台並ぶほどの大きさです。
一行は西安から西の周至県の大秦寺(だいしんじ)と呼ばれる景教会堂に向かいました。そこには唐代から景教会堂が建ち、景教碑もここに建っていたとのうわさがあり、その地は丘陵地帯の大変な田舎の光景でした。バスは目的地まで行けなくて徒歩で30分ほど登っていくことになり、しばらくすると、10頭ほどの馬に乗った地元の人が近づき、1人いくらかで乗れば目的地に行けると言われ、無理やり「乗れ、乗れ」と言い続けるありさまに、恐れを感じるほどでした。しかし、帰りは大変でしたので、その馬タクシーに乗り下山したら、料金の交渉がうまくいかずガイドが怒り出し、地元の馬主たちと言い争う一幕がありました。
大秦寺会堂跡に着くと、館長が快く迎えてくれ、碑林博物館と同じ立派な模刻碑に接することができ、参加者は大感激でした。
大秦寺文物管理所の前には、2000年に建った「大秦寺重立景教碑記」と漢文で書かれた石碑があり、それには唐代に景教碑がこの地に建ち、明時代の末ごろに土の中から発見されたが、清時代に盗難に遭い、それが西安城内の西安碑林博物館にあるとのことが書かれてありました。
一行はホテルへと向かい、バスの中では日本にも景教碑を建てようとの機運で盛り上がりました。
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川口一彦(かわぐち・かずひこ)
1951年、三重県松阪市に生まれる。現在、愛知福音キリスト教会牧師。日本景教研究会代表、国際景教研究会(本部、韓国水原)日本代表。基督教教育学博士。愛知書写書道教育学院院長(21歳で師範取得、同年・中日書道展特選)として書も教えている。書道団体の東海聖句書道会会員、同・以文会監事。各地で景教セミナーや漢字で聖書を解き明かすセミナーを開催。
著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。最近は聖句書展や拓本展も開催。