東北大学の阿部高明(たかあき)教授らのチームは、国が難病に指定している「ミトコンドリア病」の進行を抑える効果のある新化合物「MA−5」を開発した。マウスを使った実験で効果が見られたという。ミトコンドリア病は現在、有効な治療法がなく、世界初の治療薬開発の可能性がある発見だという。研究チームが26日に発表した。
ミトコンドリア病は、細胞内のエネルギー産生工場ともいえるミトコンドリアに障害をきたす疾患で、神経・筋、循環器、代謝系、腎泌尿器系、血液系、視覚系、内分泌系、消化器系でエネルギー(ATP=アデノシン3リン酸)産生低下が起こり、幼少期から非常に大きな障害を生じさせる希少疾患。研究チームによると、現在のところ厳密に効果があると確定された治療薬はないという。
阿部教授らは腎臓病患者の血液中にATP産生亢進作用があるインドール化合物が含まれていることを発見。その化合物の誘導体ライブラリーをスクリーニングし、新化合物「MA−5」を発見した。「MA−5」は、ミトコンドリア病患者由来の培養細胞の細胞死を抑制し、さらにミトコンドリア病のマウスで実験したところ、マウスの生存率を上げたという。
現在、「MA−5」の安全性試験が行われており、安全性が確認され次第、ミトコンドリア病患者を対象とした治験を始めるという。
また、この研究成果は、米国腎臓学会学術誌『Journal of the American Society of Nephrology』(電子版)に25日午後5時(日本時間26日午前7時)掲載された。
難病情報センターによると、ミトコンドリア病の患者は、英国やフィンランドの統計では10万人に9〜16人と報告されているという。しかし、ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能低下が原因の病気の総称であり、症状が多様で、軽い症状の患者も多くいると予想されていることから、実際の数はさらに多い可能性があるという。