中東のシリアとイラクを中心に勢力圏を持つイスラム過激派組織「イスラム国」(ISIS、IS)による両国外でのテロの犠牲者が、ここ2カ月間で500人を超えた。米NBCニュースは、「イスラム国」がドイツや英国、米国などを含むシリア・イラク国外のターゲットを順に攻撃しているのではないかと懸念する複数の情報関係当局者の見方を伝えている。
NBCは17日、今月13日にフランスの首都パリで発生した同時多発テロによる犠牲者約130人、また最近、テロによるものだとロシアが断定した、エジプト東部シナイ半島で墜落したロシア機の乗客乗員224人、10月にトルコの首都アンカラで起きた爆弾テロによる犠牲者約100人、さらにレバノンの首都ベイルートで今月12日に発生したテロによる犠牲者約40人など、ここ2カ月間で「イスラム国」のテロによって犠牲となった人々の数は、シリア・イラク国外で500人を超えると伝えた。
その上でNBCは、パリのテロが西欧社会に対する組織的な攻撃の一部だと当局者らが考えていると伝えている。また当局者らは、爆弾の製造やテロの計画など、より高い作戦遂行能力を持つ個人またはグループが、「イスラム国」を援助、あるいは「イスラム国」と協力している兆しがあると見ているという。
一方、シドニー、ニューヨーク、メキシコシティにオフィスを置くシンクタンク「経済平和研究所」(IEP)は17日までに、「2015世界テロ報告書」を発表した。これは、2014年に世界で起こったテロについて分析する報告書で、14年はテロにより3万2658人が死亡したと報告している。13年のテロ犠牲者は1万8111人で、1年で8割も増加したことになる。これは、2000年のテロ犠牲者の9倍の数で、ここ15年間で最悪だという。
この報告書によると、14年に発生したテロの約8割はパキスタン、ナイジェリア、アフガニスタン、シリア、イラクの5カ国に集中している。このうちイラクでは死者が9929人に達し、一国の犠牲者数としては過去最悪となった。
犯行声明が出されたテロでは、ナイジェリアで脅威を振るうイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」と「イスラム国」によるものが5割を超えた。
一方、IEPが調査対象とした162カ国のうち、約6割の95カ国が2014年はテロの被害を受けなかった。一方、IEPは、テロ以外の殺人による犠牲者は毎年少なくとも世界で43万7千人はいるとし、テロによる犠牲者の13倍以上もいることを指摘している。