日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)のワーカー(保健医療従事者)として、2007年からバングラデシュに派遣されている山内章子(あやこ)さんの報告会「バングラデシュから愛をこめて」が11月23日(月祝)、日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で行われる。理学療法士である山内さんは、バングラデシュでリハビリテーションの指導や、実際にリハビリを必要としている人々へのセラピーを行っている。報告会では、バングラデシュの障がい者を取り巻く状況や、社会的に非常に弱い立場にありながらも、自信と笑顔を取り戻していく障がいのある人々の様子を伝える。
都市部から少し離れると、まだ電気のない生活をしている人々も多いバングラデシュでは、正規の理学療法士はいるものの、貧しい地域にまでその手が伸びるのは、まだまだ先のことだといわれている。山内さんが働く北部のマイメンシン県では、ある程度の技術を学んだ理学療法技術者と呼ばれる人々が、障がい者の訓練を行い、啓発活動を通して社会参加を促している。
バングラデシュ北部の小さな町で障がい者のための仕事をしている理学療法技術者のロビンドロ・ケルケタさんは、山内さんからリハビリテーションの技術を学んだ一人だ。マイメンシン県にある超教派の男子修道会「テゼ共同体」に寄宿していたケルケタさんは、故郷に戻るためにテゼ共同体を離れるとき、「ここで学んだことを今後どう生かしていくつもりか」とブラザーに問われ、自分の故郷に何が必要なのかを考えた。ブラザーたちが、貧しい人たち、弱い人たちの友として活動している姿を見て、自分の故郷に一番欠けているのは障がい者のための仕事だと気が付いたという。そして、ブラザーから山内さんを紹介され、リハビリテーションの技術を学ぶことになった。JOCSからの奨学金で、障がいについての研修も受け、「障がいのある人たちのために、これからも働いていきたい」と話している。
一方、ケルケタさんによると、バングラデシュでは障がい者への理解が進んでおらず、障がい者を見下してしまう人が多いという。
山内さんが実際に治療に当たった、貧しい集落に住むある女性(20)は、6歳の時に木から落ちて足首を負傷した。医者から「放っておけば治る」と言われ、しかるべき治療を受けなかったため、足が曲がる障がいを負ってしまった。両親は「障がいのある子どもに教育を受けさせる必要はない」と小学校にも行かせず、この女性はほとんど家の外に出ることなく生活をしていたという。それを知った近所の人が、山内さんが働く「障がい者コミュニティセンター」を紹介し、女性はそこで初めて、障がいのある人も普通の人と同じく働いて良いのだと知った。現在は、同じような境遇の女性たちと共に勉強し、小学校2年生までの読み書きができるようになったという。
報告会では、こうした山内さんが7年間の活動で出会った人々が、新しい希望の人生を歩み始めている様子を伝える。また、110年以上の歴史がある慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団による合唱も予定されている。JOCSでは、「クリスマスが近づく11月末、バングラデシュから届く愛を分かち合いませんか」と参加を呼び掛けている。
参加無料。要事前申し込み。申し込みは専用フォームで。詳細・問い合わせは、JOCS(担当:大久保、電話:03・3208・2416、メール:[email protected])まで。