【CJC=東京】英紙フィナンシャル・タイムズが7月28日付で、「9月の教皇訪米を前に、米国人、特に保守派が78歳のアルゼンチン人教皇に対して冷たくなったように見える」という記事を掲載した。
教皇フランシスコが2013年にカトリック教会のトップに選出された時、米国のカトリック教徒の間では、新教皇の謙虚なスタイルや改革志向の計画、新大陸のルーツが米国における教会の命運を復活させるかもしれないとの期待が沸き起こった。
しかし米ギャラップ調査では、米国人の間で教皇を好意的に見ている人の割合は14年2月の76%から59%に低下した。これは前教皇のベネディクト16世への評価を上回っているものの、ヨハネ・パウロ2世が教皇在任中にほぼ一貫して記録していた水準を下回る。
同紙は、これを「明らかな幻滅感」とし、グローバル資本主義に対する教皇フランシスコの批判がここ数カ月でエスカレートした後に生じたものと言う。
教皇は7月の中南米訪問で、縛りのない自由市場を「悪魔の糞」「狡猾な独裁」と呼び、先頃の回勅では、自然を略奪しているとして大企業を非難した。
「教皇のメッセージに、米国が特に厳しい観衆であることは間違いない」と言うのは、ボストンのカトリック系ウェブサイト「クラックス」のジョン・アレン副編集長。
「ある意味で、彼はとにかくわれわれの教皇ではないという認識がある。それは反資本主義がどうこうというだけでなく、中心よりも周縁を持ち上げる教皇の意欲の問題もある。大半の基準でわれわれ(米国)は中心だ」
教皇が、ボリビアのエボ・モラレス大統領から贈り物としてハンマーと鎌をかたどった十字架を受け取ったことも、本能的に社会主義を警戒し、場合によっては嫌悪感を覚える多くの米国人にとって、特に不愉快だったかもしれない、と言う。
「ポーランド人のヨハネ・パウロ2世とドイツ人のベネディクト16世の時は、保守派はバチカンが完全に共産主義に反対していることが分かっていた」と言うのは、英国のカトリック週刊誌タブレットのキャサリン・ペピンスター編集長。
「だが、フランシスコについては、それほど確信を持てない。保守派は、中南米出身というルーツから、教皇は解放の神学者で隠れ左派だと心配している」
失望感は、米国の保守派の間で広がっていると見られる。保守派層では、教皇フランシスコに好意的な人が72%から45%に落ち込んだ。
リベラル派も熱意を失っているようだ。左寄りの米国人の教皇支持率は、ギャラップの調査で82%から68%に低下した。
教皇が同性愛や離婚、女性司祭職に対するカトリック教会のかたくなな態度を和らげるために十分迅速に動いていないことが原因である可能性がある。
同紙の指摘に、肝心のバチカン側の見方はとなると「教皇はカトリック教徒であり、右派でもなければ左派でもない」と静観の構えのようだ。