イスラエル北部のタブハ村にある「パンと魚の奇跡の教会」の放火襲撃事件を受け、エルサレムのカトリック司祭が、エルサレムでユダヤ教過激派がキリスト教に対する脅威となりつつあると懸念を示した。
カトリック団体「エイド・トゥ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)によると、18日に火災が発生した同教会の外壁には、「全ての偶像は破壊される」というユダヤ教の祈りから引用された警告文が、赤いスプレーで書かれていた。
ラテン・エルサレム総大司教庁のウィリアム・ショマリ補佐司教がACNに語ったところによると、この放火で、ベネディクト会の修道士と教会を訪問していた人々が煙を吸ったという。また、ショマリ補佐司教は、ユダヤ教の過激派たちが、他の信仰を持つ集団、特にキリスト教徒をターゲットにしていることについて不安を持っていると語った。
「反キリスト教の暴力は本当に増加しています。小さな火ではまだダメージも小さいのですが、火が大きくなると、多大なダメージを生み出すことができ、そして殺すことすらできてしまうのです」とショマリ補佐司教は語った。
「私はこの事件は、非常に小さな攻撃的なグループによって実行されたと思いたいです。ユダヤ教にはリベラルなグループと不寛容なグループがありますから、全てのイスラエル人が同じだとは言えません。寛容さがなく、ユダヤ教徒ではない人が嫌いな人・・・。私の恐怖はこういった急進的な人たちについてで、彼らの数と不寛容さの度合いは増加の一途にあります」とショマリ補佐司教は述べた。
同教会では、土産物店や巡礼者のための部屋、会議室などを含めた建物の多くの部分が火事により大きな被害を受け、また聖書や祈りの本が燃えてしまった。
一方、イスラエルで子どもの支援を行う非営利団体「シャルバ」のディレクターであるニコール・ジャンセリアン氏は23日、米クリスチャンポストの取材に応じ、キリスト教徒にとってイスラエルは非常に安全だと語った。
「(今回の)攻撃は悲劇的で、過激派の中には人種差別主義者がおり、キリスト教に対して古い考えを持っていることが分かります。ところがイスラエルは、キリスト教徒が安全でいられ、迫害の脅威にさらされていない中東における唯一の国なのです。私たちは自由の中に生活し、礼拝をしており、大部分のユダヤ教徒から脅迫をされるということは、とてもまれか、もしくは全くないのです」とジャンセリアン氏は言う。
しかし同時に、ジャンセリアン氏は、エルサレム旧市街地において、ユダヤ教徒とキリスト教の聖職者らの間で口論があることに言及した。
「これは、イスラエルにおけるキリスト教徒に対する暴力が増えていることを表しているのでしょうか? 私にはこの質問に対する答えは分かりません。私は個人的な影響はまだ受けてはいません。私は安全を感じていますし、宗教の違いがあっても、社会で差別などは受けていないと感じています」と彼女は付け加えた。
イスラエルのルーベン・リブリン大統領は、この放火事件が発生してから数時間後、エルサレムは全ての宗教にとっての場所として存続していくべきだと述べ、事件を非難した。「古くからの祈りの聖地でのこのようなひどい冒とくは、わが国における生活の基盤を攻撃するものだ」とリブリン大統領は述べ、「イスラエルは、国家として、社会として、全ての宗教のために聖地を保護し、維持することに義務があります」と付け加えた。