東武東上線成増駅から徒歩5分。閑静な住宅街の中から、小さな子どもたちの元気な声が響いてくる。3歳から6歳児が通う「ニューホープ・インターナショナル・プリスクール」。英語を中心に会話し、聖書に基づいた教育を行う、クリスチャンの価値観を養う“幼稚園”だ。
開園して10年目になるプリスクール。東京・御茶ノ水を中心に活動する教会、「ニューホープ・インターナショナル・フェローシップ」が運営している。「東京での教会開拓を始める前から、小さな子どもたちの通える園の開園は考えていました」と語るのは、スクールディレクターのジェレミー・セミノフ牧師。基本的に英語で教育を行う同園だが、ジェレミー牧師は気さくな人柄で、流ちょうな日本語を話す。英語は苦手という保護者も安心だろう。
ドアを開けると、元気いっぱいの子どもたちがいた。先月、9人の卒園生を送り出し、2階建ての建物で、現在は12人ほどの子どもを預かっている。新学期は始まったばかりで、とてもにぎやかな印象だ。
「ニューホープ」は家族を大切にする教会だ。教会を訪ねたときにも、子どもたちが奔放に走り回っていたが、プリスクールでも子どもたちが同じように自然体で過ごしていた。「もちろん日々の活動の中で、子どもたちにけががないように気を付けていますが、毎週何かテーマを決め、自由な雰囲気の中でそれを重点的に教えるようにしています」と、プリスクール主任の山瀬エレン先生が笑顔で話す。
テーマを決めて教育というのは、単純なようで効果は大きいという。例えば、「愛を示す」がテーマのときに、子どもたちがおもちゃを取りあってけんかになってしまうことがある。そんなときは良いチャンスだ。
「そんなときは『どうすれば愛を示せるかな?』と子どもたちに問い掛け、彼らに考えさせます。そうすることで、その時々のテーマを実生活に適応させるように教えることができます。子どもはさまざまな方法で学ぶので、違った角度から、いろいろな要素を用いることによって、深みのある教育ができるんです」
絵本や工作、歌、体育でもただ指導するのではなく、常にテーマを織り交ぜながら行う。「聖書のことを教えるときも、聖書に書いてある言葉だけを学ばせるのではなく、聖書が実生活のいろんな場面に関係しているんだよ、ということを子どもたちに学んでもらうことが大切だと考えています」と山瀬先生。
一方、同園は幼児が帰ると英語の教室に早変わりする。幼児から小学生の児童まで、幅広く教えている。「英語の教室からプリスクール、それから教会に来てくれることもあります。平日から子どもたちが出入りしていれば、土日も皆さんが来てくれやすい。子どもたちが神様を知り、その子どもたちを通して親御さんたちが神様を知ってくれれば、あとは神様が働いてくれます」と、十分に手応えを感じている様子だ。
またジェレミー牧師は、「今現在のことだけではなく、彼らの将来も考えて指導する必要がある」と強調する。「例えば騒いでしまう子どもたちがいたとして、今この瞬間を丸く治めればそれでいいという視点で教育を行ってはいません。僕が大きな声を出して、子どもたちに言うことを聞かせることはできるけど、そんなやり方が彼らを豊かな人間にするとは思えない。私たちはベビーシッターではありません。単に子どもたちを預かっているのではなく、イエス様と同じ価値観を持つ人を育てていると考えているのです」と、子どもの“しつけ”だけではなく、彼らの将来にフォーカスするという園の方針を語った。
また日々の教育で英語を用いることによって、子どもたちは自分自身の文化を尊重すると同時に、違った文化を持つ人への尊敬を養うことにもつながっているようだ。
言うまでもなく、子どもたち一人ひとりが特別な存在。その個性を彼ら自身がどう伸ばし、地域社会に対して何を提供できるか。同園では、そうしたこと全てを子どもたちに、小さなうちから考えさせるよう道をつくっている。温かい眼差しに見守られた環境で元気に走り回る子どもたちを見て、日本の未来に期待を抱かずにはいられない。